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  • 2014.03.28掲載

特集 4月1日スタート! マンション管理組合の消費税率引上げに関する注意点

公認会計士 吉岡順子

4 管理組合の消費税等の課税関係

1◆収入

管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。したがって、管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。

イ 駐車場の貸付け………
組合員である区分所有者に対する貸付けに係る対価は不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係る対価は消費税の課税対象となります。

ロ 管理費等の収受………
不課税(消費税は課税されない)。

(注)国税庁HP質疑応答事例 消費税「5.マンション管理組合の課税関係」より


2◆支出

管理組合の支出には様々ありますが、消費税の課税対象となる主なものとしては、管理業務を管理会社へ委託する場合に支払う委託業務費、清掃業務費、設備管理業務費、電気料、水道料等の公共料金、インターネット利用料、大規模修繕工事費に代表される修繕工事費、リース料等が挙げられます。
① 委託業務費
管理会社による管理業務は、原則として一か月単位の役務提供のため、平成26年4月以後、提供される役務については、新税率(8%)が適用されます。例えば、平成26年4月分の委託業務費を平成26年3月31日以前に前払いする場合には、新税率(8%)が適用されます。

なお、国土交通省の公表する標準管理委託契約書においては、消費税法等の税制の制定または改廃により、税率等の改定があった場合には、委託業務費のうちの消費税額等は、その改定に基づく額に変更する旨の条項が設けられています。

(法令改正に伴う契約の変更)
第22条 甲及び乙は、本契約締結後の法令改正に伴い管理事務又は委託業務費を変更する必要が生じたときは、協議の上、本契約を変更することができる。ただし、消費税法等の税制の制定又は改廃により、税率等の改定があった場合には、委託業務費のうちの消費税額等は、その改定に基づく額に変更する。
(注)国土交通省「マンション標準管理委託契約書」より抜粋

② 清掃業務費、設備管理業務費
清掃業務費、設備管理業務費についても、役務提供のため、平成26年3月31日以前に提供を受けた分については、旧税率(5%)が適用され、平成26年4月1日以後に提供を受けた分については、新税率(8%)が適用されます。

③ 電気料、水道料等の公共料金およびインターネット利用料
公共料金には経過措置が適用されますので、使用量が検針その他の方法により把握され、これに基づき料金が確定し、平成26年4月30日までに支払うものについては、旧税率(5%)が適用されます。

なお、インターネット通信料金などで、月々の使用量に関係なく定額料金となっている場合には、経過措置の適用対象とはならず、新税率(8%)が適用されます。ただし、料金設定が多段階定額制となっている場合には、使用量に応じて料金の支払いを受ける権利が確定することになるため、経過措置の適用対象となり、旧税率(5%)が適用されます。

また、水道料金が2か月に1回検針を行う場合で、例えば、平成26年5月26日に検針し、使用量およびそれに応じた水道料金が確定する場合には、平成26年5月26日の検針により確定した料金の全額について、旧税率(5%)が適用されることになります(「3 消費税等に関する経過措置の取扱い ③公共料金には経過措置が適用される」参照)。

④ 大規模修繕工事費に代表される修繕工事費
工事請負契約を平成25年9月30日までに締結した場合には、工事完了が平成26年4月1日以後となっても、旧税率(5%)が適用されます。契約書その他の書類を作成しない場合には、経過措置の適用は受けられません。
工事請負契約を平成25年9月30日までに締結していれば、平成26年4月1日前に工事が着工していなくともよく、契約に係る工事代金の全部または一部を支払っていなくともかまいません。

⑤  リース料
平成8年10月1日から平成25年9月30日までに締結した契約に基づき、次の①および②、または①および③の要件を満たす場合には、旧税率(5%)が適用されます。
①  当該契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること
② 事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
③ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと並びに当該貸付けに係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む。)の合計額のうち当該契約期間中に支払われる当該資産の貸付けの対価の額の合計額の占める割合が100分の90以上であるように当該契約において定められていること


5 おわりに

今回は、消費税率引上げに関する注意すべき点を取り上げました。新旧どちらの消費税率が適用されるのか、本稿が組合員の皆さんの一助となれば幸いです。

参考資料
「消費税法改正等のお知らせ」(平成25年11月 国税庁)
「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」(平成25年4月 国税庁消費税室)
「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」(平成26年1月 国税庁消費税室)

★巻末資料★
 「消費税引上げに関するQ&A」
(平成25年11月19日付会員宛て通知(管理協25-190) マンション管理業協会)

1.消費税率改定前に更新時期が到来する管理委託契約の更新について

Q.平成25年12月までの管理委託契約(以下「原契約」という。)を締結している場合、更新のため新たに締結しようとする平成26年1月以後の管理委託契約(以下「更新契約」という。)第6条の委託業務費はどのように記載すれば良いですか。

A.マンション標準管理委託契約書第6条第2項は、以下のとおりの記載となっています。

甲は、前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以下「定額委託業務費」という。)を、乙に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。

一 定額委託業務費の額
   合計月額○○円
   消費税及び地方消費税抜き価格○○円
   消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)○○円
   内訳は、別紙1のとおりとする。

そして、第22条には以下の記載があります。
 ≪略≫ただし、消費税法等の税制の制定又は改廃により、税率等の改定があった場合には、委託業務費のうちの消費税額等は、その改定に基づく額に変更する。

更新契約には、マンション標準管理委託契約書に準拠した「第22条ただし書きの文言」又は同等の規定を含んだうえ、更に、契約当事者相互の確認のために、第6条に示す「委託業務費の額」は、下記記載例のように、平成26年4月1日から8%に引き上げられた定額委託業務費を記入することが、より望ましいでしょう。

記載例

 一 定額委託業務費の額
   契約開始日から平成26年3月31日まで
   合計月額○○円
   消費税及び地方消費税抜き価格○○円
   消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)○○円(5%)
   平成26年4月1日から契約終了まで
   合計月額○○円
   消費税及び地方消費税抜き価格○○円
   消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)○○円(8%)
   内訳は、別紙1のとおりとする。


なお、原契約にマンション標準管理委託契約書第22条ただし書き又は同等の規定がない場合において、契約の更新にあたり、当該原契約を変更する場合は、「消費税法等の税率の改定に基づく額に変更する」こと及びマンション標準管理委託契約書第22条ただし書きの規定を追加することは、軽微な変更に含まれるものとして、法第72条第2項に規定する「同一条件」に区分できます。

2.消費税率改定後に更新時期が到来する管理委託契約の対応について

Q.平成26年6月までの管理委託契約(以下「原契約」という。)第6条の委託業務費の消費税率は5%の記載ですが、どのような対応をしたらよいですか。

A.マンション標準管理委託契約書第22条には以下の記載があります。

≪略≫ただし、消費税法等の税制の制定又は改廃により、税率等の改定があった場合には、委託業務費のうちの消費税額等は、その改定に基づく額に変更する。

従って、原契約にマンション標準管理委託契約書第22条ただし書き又は同等の規定があるときは、管理組合と予め合意できていると考えられることから、消費税率の改定の時期に、税率の改定に基づく委託業務費の変更が可能と考えられます。この場合でも、消費税率の改定による委託業務費の変更について、管理組合に、事前に案内することが望ましいでしょう。
一方、原契約にマンション標準管理委託契約書第22条ただし書き又は同等の規定がないときは、管理組合と予め合意できているとは必ずしも言えないことから、管理組合に対し消費税率の改定に基づく委託業務費の変更について、協議する必要があると言えます。協議の結果、変更契約等を締結する場合は、予め重要事項説明の必要が生じます。なお、原契約にマンション標準管理委託契約書第22条ただし書き又は同等の規定がない場合において、契約の更新にあたり、当該原契約を変更する場合は、「消費税法等の税率等の改定に基づく額に変更する」こと及びマンション標準管理委託契約書第22条ただし書きの規定を追加することは、軽微な変更に含まれるものとして、以下のような事例も、法第72条第2項に規定する「同一条件」に区分できます。

① 仕様を変更せずに委託業務費を減額するとき
② 仕様を変更せずに消費税法等の税率等の改定に基づく額に変更することを明記するとき

3.定額委託業務費以外の費用の対応について

Q.消費税及び地方消費税額の引上げに伴う、定額委託業務費以外の費用の記載は、(消費税額等を含む)になっていますが、どのような対応をしたら良いですか。

A.マンション標準管理委託契約書第6条第3項には以下の記載があります。

第1項の業務委託費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。)は別紙2のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。

従って、定額委託業務費以外の業務についても消費税額の改定の必要がありますが、2.同様に原契約にマンション標準管理委託契約書第22条ただし書き又は同等の規定がある場合は、消費税率の改定に基づく委託業務費以外の業務の請求額の変更が可能と考えられます。ただし、よりわかり易くするには、定額委託業務費と同様に合計額の内訳として、税抜価格と税額を記載することが望ましいでしょう。

記載例

別紙2の記載
  一 ○○業務費 合計額   円   円(税抜価格)、    円(消費税額等8%)
  二 ○○業務費 合計額   円   円(税抜価格)、    円(消費税額等8%)
  三 ○○業務費 合計額   円   円(税抜価格)、    円(消費税額等8%)
Profile
吉岡 順子 (Yoshioka Junko)

1984 年 東北大学経済学部卒業
1993 年 公認会計士登録
2005 年 (株)MACC設立・代表取締役就任
大手管理会社の会計監査に長年従事した経験を活かして、マンション管理組合の会計の信頼性向上に貢献するべく、会計専門家による管理組合会計の個別決算検証業務および管理会社における組合会計業務(収益事業課税対応も含む)に関するコンサルティング・サービス他を提供している。「新版マンション管理組合財務会計の手引」(共著・監修)(( 財) マンション管理センター)、「マンション居住者のための管理組合会計がまるごとわかる本」(住宅新報社)