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  • 2014.04.01掲載

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取材レポート マンション集会室の有効利用

集会所で高齢者サロン開いて、孤独死対策につなげた活動を

集会所の外観。大規模団地だけに集会所も単独棟で広い 神奈川県横浜市にある全18棟・総戸数408戸の分譲団地です。昭和54年に竣工、現在築35年です。

集会所は、管理事務所と約40人収容の洋間と、8畳・6畳の2和室などで構成される単独棟で、団地のほぼ中央に位置します。集会所の活用の仕方は主に理事会・長期管理計画委員会、自治会、防災会等。また体操教室、洋裁サークル、短歌会、生け花、編み物、囲碁などのサークルに利用されています。壁はギャラリーとして住民の絵と写真が展示されています。

◆集会所で、誰でも参加できる高齢者サロンを開催

当日の高齢者サロンはすいとん作りと食事会。毎週20~30人が集まる。高齢者の福祉対応への取り組みだ 「ふらっと・ほっと高齢者サロン」の由来は、サロンにふらっと立ち寄り、ほっとできる気分になれるという願いを込め、平成23年に作りました。

築30年を超え、団地に永住を望む人が多く、さらに高齢者のひとり暮らしも増えはじめていました。 新聞等で報道される孤独死がこの団地にいつ起こるかもわかりません。このため、組合員有志で高齢者の福祉対応として取り組みを開始したのが「ふらっと・ほっと高齢者サロン」です。管理組合が無料で集会所を自治会に使ってもらうという位置づけです。高齢者サロンは自治会傘下ですが、管理組合としては「コミュニティーは自治会と協働で行う」と考えています。

対象は65歳以上。毎週金曜日10時~16時に集会所に集まり、おしゃべりや歌、編み物、囲碁などを自由に行える空間です。

◆サロンに来てもらうことが一番大切 イベント開催はそのための手段

集会所まで車椅子などで来られなかった人のためにも、メンバーがすいとんを届けるという 行事としては、芋煮会、団地内の散策(花見や紅葉見物)、ホットケーキ作り、クリスマス会、映画会、ビアガーデンなど。取材当日は、大雪の中、すいとん作りと食事会が開かれました。メンバーの中には80歳、90歳代(最高96歳)になる人もいて、車椅子や足元が不安だという人が雪面を歩くことはできません。この日は、そうした人たちにもメンバーがすいとんを届けていました。

ただし、行事が最大の目的ではなく、単におしゃべりをするとか、読書をするとか、みなさんのしていることを見ているだけとか、自分流の過ごし方をすることがサロンの目的です。とにかく、自宅に引きこもっていないで、サロンに来てもらうことが第一義なのです。

◆ひとり暮らしでも寂しくない環境をづくりで孤独化を防止

その理由として、管理組合理事長は「こうした福祉の対応で大切なことは顔がしっかり見えていること」と言います。ちなみに理事長はこの地区の社会福祉協議会の理事も務めていて、「ふらっと・ほっと高齢者サロン」の代表でもある安本とよ子さんです。

孤独化を防ぐためにはひとり暮らしでも寂しくない環境を整えることですが、そのためには手を差し伸べる人がいることが大切です。 大勢の人と話すのは苦手という人もいます。そういう人たちにも気軽に参加してもらうことが高齢化対応、福祉対応であるのです。

◆居住者の多くは永住を希望しているため、ハード面も改善

団地における65歳以上の人口割合が26%と、近隣地区の中でも高齢化が進んでいるとみられています。入居者が入れ替わり、若い世帯の入居もありますが、先に述べた通り、永住を望む人も多いのが現状です。

高齢化が進む中で、建物内部や階段部分のすべてに手すりをつけました。車椅子走行のための段差解消、集会所の車椅子用トイレの設置など、バリアフリー改善も徐々に行っていく予定だといいます。

サロンを通して仲間が生まれて老後の生活に張りを持つことができることは、高齢者にとってもよいことでしょう。管理組合に対する高齢者の要望も意見としてまとまりやすくなります。管理組合としても緊急時に互いに助け合える環境があることは有意義だと思います。日頃からコミュニティ形成を行っていることは、大震災など有事の際に役立つこと必須です。