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  • 2018.04.02掲載

民泊への対応 -規約の見直しを-

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

誰だ!! 誰だ!! 指定日ではないのに、有害ごみを出したのは誰だ!?
誰だ!! 誰だ!! 共用の庭に、いろいろな花を植えるのは誰だ!?
誰だ!! 誰だ!! いきなりリフォーム工事を始めたのは誰だ!? うるさくてたまらない。なんだか最近、マナーを守らない人が増えてきた気がする。どうしてマナーを守らないのかな……。

●マナーって何?

 マナーというと堅苦しい感じがしますが、お互いが気持ちよく暮らすための知恵だと思ってください。マンションには、みんなで使うエントランス、廊下や階段、エレベーター、集会室、自転車置き場、駐車場、そのほか様々な共用施設があるところもあります。お互いが快適に使うためのルールがありますが、それ以前にマナーも必要です。また、お互いの住まいが隣り合ったり、階上・階下に重なって暮らしているので、ご近所に迷惑をかけないように、という思いやりが必要となります。

 でも、国や地方、地域、時代によって習慣が違うように、また、個人によって価値観が違うように、自分の感覚だけに頼っていると、知らないうちに周りに迷惑をかけてしまうことがあります。そうした感覚のずれがマンションの生活上のトラブルになることがあるわけです。マンションでの生活で大事なことのひとつに、問題を予防するということがあります。一度問題が起これば、どうしてもなかなか解決しないことがありますよね。ですから、お互いが気持ちよく暮らすために、マンションでのマナーを、新しく入ってきた人にもお知らせすることが必要です。


●暮らしのガイドブック

 どうも、最近入ってくる人はマナーに欠けるな……なんて思っている人がいるかもしれません。でも、それって本当でしょうか。そこに長くお住まいの人には自然と身についている「このマンションでトラブルを起こさずに暮らす作法」が、まだ身についていないだけなのかもしれません。具体的に何をするとどんな迷惑になるのかが、まだわかっていないのでしょう。

 冒頭のように有害ごみを間違えて出してしまえば、多くは管理員さんが別の場所に一時保管して、次の回収日に出してくれるのではないでしょうか。そのため、間違った本人がずっと気が付かないままなのかもしれません。共用庭に勝手に花を植えたりするのも、庭を素敵な花でいっぱいにして、みんなに喜んでもらいたくてやっている場合もあるでしょう。こういうことをする人たちは、単に、共用部分とは何かや、こうした行為が時には植栽管理のトラブルになるといったことにまで考えが至っていないのかもしれません。みんなのスペースに花を植えるという行為そのものは、その場所への愛着を高め、決して悪いことではないのでしょうが、やり方が問題なのです。
 リフォームの工事も、まだ住んでいない人であれば、振動や音でどれだけ迷惑をかけているのか、わからないのではないでしょうか。私たちは、住みながら、実は多くのことを学んできているのです。
 ですから、入居の際に「あれダメ!これダメ!」という禁止事項のみを伝えるのではなく、このマンションの思いやりの形を教えてあげませんか。「そんなの、規約や使用細則があるからわかるでしょ!」と言わないでください。初めて入居する際に、規約を渡されてどれだけ理解できましたか?

 そこで、お住まいになるマンションで暮らすにあたっての必要な情報を「暮らしのガイドブック」や「入居のしおり」といったものでご紹介するのはいかがでしょうか。文字だけでなく、イラストなどがあれば、子供や外国の方にもわかりやすいはずです。例えば「素敵なマンションライフのために」といったように、タイトルも工夫をすると、よりいいかもしれませんね。