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  • 2010年夏号

快適なペットライフのためのマナーとルール

株式会社クララ 代表取締役 薬師寺 康子

◆どのようなケースがペットトラブルになりやすいのか?

では、トラブルになりやすいのはどういった場面でしょうか。一番は犬を外に連れ出す散歩時です。中でも糞尿のクレームが多いです。外でペットが排泄してしまった場合、糞は必ず持ち帰り尿には水をかけて洗い流す、これはいまや当たり前の飼育マナーです。しかし、糞は持ち帰っても尿はそのまま放置するケースは多いようです。また水を流しても尿を完全に処理することは困難で、どうしても臭いが残ってしまい、他の犬がその場所に繰り返し排尿をしてしまいます。これらがクレームの原因となってしまうのです。

散歩の目的は犬の排泄と考えられがちです。しかし、今ではほとんどの犬は室内飼いのため室内で排泄するようしつけられており、外でしか排泄できない犬は減ってきました。いまや散歩の目的は、犬の運動や探索行動のニーズを満たすものへと変わってきているのです。マンション共用部はもちろん、公園などの公共の場所で排尿させないためにも、散歩に出かける前に室内で排尿を済ませておくことが、マナーとして推奨されています。ドッグカフェなど犬と一緒に入れる施設を利用する飼い主は、ペットシートを持参し、施設に入る前にあらかじめその上で排尿するようしつけている人がほとんどです。

都会のように密集した環境で犬と人が共生していくためには、犬の排泄問題は、糞だけでなく尿への対処マナーが大切になってきているのです。

次に、犬にリードを付けずに散歩をすることへのクレームも多いです。また、リードが長くて飼い主が犬を制御できない状態での散歩も、犬が苦手な人にとっては大変迷惑です。国の行政基準でも、犬を外へ連れ出すときは必ず引き綱を装着するよう定められており、リードを犬に装着することは当然の飼い主の責任です。さらに、人とすれ違う時はリードを短くして犬を飼い主の身体の横に引き寄せる配慮をすることは、必要なマナーなのです。

これらのマナーを個人で推進するには限界があります。クレームに対しては、飼い主同士が互いに連携を取り合い、組織でもって対処していかねばなりません。そこで「ペットクラブ」という存在がとても重要になってくるのです。

◆ペットクラブが担う役割

ペット可マンションで「ペットクラブ」が担う役割は大きく次の3つです。

①飼育者コミュニティの形成
②飼育マナーの啓蒙
③ペットクレームの窓口

個人では難しくとも「ペットクラブ」という飼育者同士のコミュニティを形成することで、マンション全体に働きかけ、飼育マナーの啓蒙を図っていくことができます。たばこのポイ捨てと同様、皆がマナーを守っているところでマナー違反はしにくいものです。 まず、「ペットクラブ」が飼育者の模範となって実践し、マナーの悪い飼い主に啓蒙を喚起しましょう。この活動によって、マンションの飼育者はもちろん、近隣の飼育者をも含めたマナーの良い環境作りが推進されるでしょう。

次に、「ペットクラブ」は、マンション住民からのペットに関するクレームの受け皿としての役割も担います。放置された排泄物や犬の鳴き声などのクレームを、どこに持って行けばよいのか分からない。飼い主個人にはクレームが言いづらい。そんな時、「ペットクラブ」がその窓口となっていれば、クレームは伝えやすく、結果、迅速な対応ができ、大きなトラブルになる前に解決することが可能となります。クレーム対応は厄介だと考えられがちですが、マナーの悪い一部の飼い主のためにペットと暮らしにくい環境となってしまうことを考えれば、「ペットクラブ」の皆で協力し合い、解決策を考えて実行していくのは必要なことでしょう。

また、オフ会などで会員同士が交流を深め、セミナーや勉強会で飼育に関する知識を身につけ、会員全員が共通したマナーへの認識を持つことも大切です。さらに、犬の散歩時間を利用した地域の清掃活動や、子どもの登下校を見守る活動など、コミュニティとしてのパワーを生かし、社会貢献活動の実践も視野に入れることで、より地域の住民からの理解や支援が得られるでしょう。