トップページ > 特集 > 快適なペットライフのためのマナーとルール
  • 連載
  • 特集
  • 2010年夏号

快適なペットライフのためのマナーとルール

株式会社クララ 代表取締役 薬師寺 康子
「ペットは家族」といわれて久しく、いまや、 15 歳未満の子どもの数を大きく上回る犬猫が、 全国で飼育されています(ペットフード工業会)。
ペットと暮らせる住宅、ペットと入れるカ フェ、ペットと泊まれる宿泊施設、とペットは私たちの生活のあらゆる場 面で受け入れられ、 ペットと人との共生環境の構築は年々広がりをみせています。
こうした中で、ペットが好きな 人も苦手な人も納得のいくルール作りやペットの飼育マナーについて、「ペット可マンション」 での取り組みをご紹介いたしましょう。

◆「ペット可マンション」の変遷

首都圏における全供給戸数に対するペット可の普及率とペット可物件全体における付加価値設備付の物件 ペットとの共生環境が進むにつれ、「ペット可マンション」の供給はますます増えてまいりました。(株)不動産経済研究所によると、2007年に首都圏で販売された新築マンションの中で「ペット可」の割合は86・2%と、9割近くにも上ります。調査を開始した1998年には、「ペット可」はたったの1・1%でしたので、これは、非常に急激な増加といえましょう。いまや、首都圏で販売されている新築マンションはほぼすべてが「ペット可」である、といってもよいのではないでしょうか。

しかし、裏を返せば、ほんの10年前までは、集合住宅のほとんどはペット不可だったのです。戦後に建築されたいわゆる「団地」でペット飼育が禁止されて以来、長い間、集合住宅ではペット禁止の時代が続きました。1997年に国土交通省が中高層共同住宅標準管理規約の大幅改正を行う中で、ペット飼育を「管理規定に定めるべき事項」として記載したことなどをきっかけに、いわゆる「ペット可マンション」が売り出され始め、その後どんどん増え続けてきたのです。マンションでもペットと暮らしたいという潜在的ニーズが、非常に多くあった表れでしょう。

「ペット可」が出来始めた当初は、デベロッパー各社は、ペットと暮らすための設備や仕様といったハードの開発に重点を置いて建築に取り組みました。それも一段落し、今では、複数のペット用設備があるマンション数は一時期よりも減ってきているようです((株)不動産経済研究所)。むしろ、現在では、快適なペットライフのためには、ルール作りや入居が始まった後の住民の飼育マナーが大切と考えられています。

◆「ペット可マンション」でのルール作りはどのようになっているの?

ほとんどの「ペット可マンション」では、ペット飼育に関する規約があらかじめ定められています。入居者はそのルールに従ってペットを飼育しなければなりません。

規約の多くは「動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」という)」の基本原則を取り入れています。つまり、動物は命あるものとの認識をしっかりと持ち、動物を虐待することや遺棄することを禁止し、さらに動物の習性をよく知り適正に取り扱うことを謳っています。

その大原則の上、飼い主の責任を
①ペットの終生飼育
②生活環境保全
③狂犬病予防注射接種と疾病予防の義務
④自己の所有であることの明示
⑤ペットによる危険の防止
とし、動愛法、狂犬病予防法、環境省の行政基準、各都道府県の条例など、国や地方が告示している法律、基準、条例をもとに、細かく定めています。すなわち、マンションでのペットに関する規約は、個々の飼育者のマナーという範疇を超え、必ず守らなければならない指針だということです。

こうした規約がきちんと守られれば、ペットをめぐるトラブルの多くは回避されます。例えば、「ペットを共用部に連れ出すときは必ず抱きかかえ、他人に迷惑をかけない」という規約が守られているマンション共用部では、犬の排泄問題も飛びつき問題も起こらないのです。飼い主が規約を守り、まわりに迷惑をかけないようペットを導くことが、快適なペットライフを送るための第一歩なのです。