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  • 2015.01.05掲載

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取材レポート 機械式立体駐車場の安全対策

ここで、マンションで実際に起こった死亡事故について、見ていきましょう。

事例1 二段・多段方式での事故

利用者は、子供2人(幼児・児童)と車で外出するために三段方式の機械式立体駐車場の前の空地に出ました。利用者が車の出庫操作を行っていると、下段(地下)にあるパレットが上昇している間に幼児が駐車場の上昇してくるパレットの上段横(地上)に立ち入り、下段から上昇してくるパレットと地上のパレットの間に挟まってしまいました。利用者は下段パレットを停止させ幼児を引き上げましたが、病院に搬送され死亡が確認されました。

たいへん痛ましい事故ですが、この事故を調査してわかったことがいくつかありました。

まず、この駐車装置はボタンを押している間だけ機械が作動する「ホールド・ツゥ・ラン」という制御方式が採用されていたこと、最下段から車を取り出す際は約90秒間ボタンを押し続ける必要があること。ホールド・ツゥ・ラン方式では、ボタンから手を放すことですぐに機械を停止できるため、このとき、非常停止ボタンなどは設置されていませんでした。

また、側面や背面に柵はあるものの、前面に設置されていたはずの手動式のくさりは事故当時には住民によって撤去されており、駐車装置内には前面から簡単に立ち入ることができました。さらに利用者は呼び出しボタンを押した状態を保つ固定具を取り付けた状態で操作し、事故当時は操作盤のそばから離れた状態でした。

比較的新しい二段・多段方式の機械式立体駐車場では、前面に柵が設けられているものが多い 前面のくさりが撤去されていたこと、固定具を使用していたことなど使用方法の問題もありますが、くさりを使用のつど取り外す作業や、90秒もの間じっと操作盤前に立ってボタンを押し続けなければならない作業は、実際に使ってみるとそれなりに面倒なものです。また、小さな子供は目を離すとどこに行ってしまうかわからない危険性もあります。

駐車装置内に立ち入ると危険であるということや、操作ボタンが安全装置の役割を果たしていることなどが、利用者やその他の居住者にきちんと情報提供されていたのか。また、簡単に取り外せるくさりではなく柵を取り付ける、操作ボタンとは別に非常停止ボタンを取り付けるなど、設計段階でもっとできることはなかったか、自由に動き回る子供の行動特性を考慮していたのか、などさまざまな角度から検討がなされました。

事例2 エレベーター方式での事故

次に、エレベーター方式を採用したマンションで起こった事故の事例です。

利用者は、幼児とともに駐車場前の空地に車を止め、操作盤を操作して駐車装置の扉を開けました。さらに幼児を乗せたまま駐車装置内に進入。旋回装置に車を駐車し、後部座席から荷物を降ろしているとき、乗降室奥に設置された鏡に幼児が外に出ていく姿をとらえ、急いで外に出て扉を閉める操作をしました。

しかし、このとき実際には幼児はまだ駐車装置内に残っており、閉じ込められてしまったのです。そのため利用者は慌てて操作盤を操作しようとして、出庫操作ボタンを押したところ、旋回装置が回転し、幼児はパレットと壁の間に挟まれてしまったのです。

エレベーター方式の駐車場は、基本的に駐車装置内へのドライバー以外の立ち入りが禁止されていますが、このマンションの駐車場は車通りの多い道路に面しており、子供を安全に待たせておける場所もないため、利用者はやむを得ず幼児とともに装置内に入ったものと思われます。

またこの事例では、設置されたセンサーが駐車装置内の無人を確認するのに不十分だったことや非常停止ボタンの位置がわかりにくいなど、いくつかの装置上の問題点も見つかりました。


事故原因と今後の取り組み

これらの事故調査の結果、調査を行った消費者安全調査委員会では、以下のことを原因としています。

○設計時の想定と実際の利用環境の相違
○人の行動特性への考慮不足
○安全対策の取り組みの遅れ

これを受けて、2014年10月に国土交通省が出した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」(改訂版)では、製造者・設置者・管理者・利用者の4者に対してそれぞれ今後留意すべき取り組みについて定めています。消費者庁消費者安全課事故調査室の佐藤謙氏はこう言います。

「特に既存の機械式立体駐車場については、その設備ごとに危険な箇所や注意すべき点が異なります。メーカー等の製造者、メンテナンスを行う保守点検業者、設置者、管理者、利用者は、それぞれ駐車施設ごとに協議する場を設けて、4者が連携・協力して安全対策に取り組むことが必要です」

現在、製造者側にあたる(公社)立体駐車場工業会が新たにより厳しい基準等を設けて対策に取り組んでいる中で、管理者であるマンション管理組合、利用者であるマンション居住者は、自分たちに今行える取り組みが何なのか、改めて考え直す時期にきているといえます。