マンション・バリューアップ・アワード

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財政部門(組合財政の健全化)

佳作
マンションの永住意識と
高経年物件の
長期修繕計画策定に向けて

株式会社長谷工管理ホールディングス
鍋島収一様


※イメージ写真

背景

  • 当該マンションは、湾岸地区の1987年竣工物件であり、最寄駅より徒歩3分、周辺の高速道路のインタ-から約2㎞という好立地に位置しています。また、プ-ルやテニスコ-ト、児童公園等の共用施設を有し、敷地内に1,000本もの樹木や広場があり自然を味わえる環境です。管理員は24時間常駐。管理組合活動の支援や共用部分の管理、工事管理、宅配便の受付・不在預かりや緊急支援など、居住者に様々なサポ-トを提供しています。居住者の意識も高く、「終の棲家」として生涯住み続ける考えを持っている人がほとんどです。
  • 当社では、国交省のガイドラインに準じて、5年ごとに修繕計画の標準案を作成しています。5年前の長期修繕計画では、若干の物価上昇や消費税の増税がある程度の認識で、資金が不足するという危機意識はありませんでした。しかし、今回の計画案で、標準的な交換時期では資金計画が不足してしまうことが分かったのです。

目的

築30年越えのマンションのさらに30年後を見据えて、通常の更新工事を行う修繕計画を見直す必要が生じました。各種工事の工事範囲を分割し、安易に修繕積立金の増額をしない新しい案の検討を行いました。

実施内容〈バリューアップ〉

資金計画が改善

資金計画グラフは、折れ線グラフが現状の修繕積立金(平均12,600円/戸)、棒グラフは修繕金額の累計表示(ピンク色:標準案、青色:今回の新しい案)となっています。今回の焦点は、3回目の大規模修繕工事を計画している39期に、修繕積立金の折れ線グラフより棒グラフが飛び出て修繕積立金の不足が生じてしまうことでした。この不足部分を解消する為に、工事の一部の更新時期を分散することにしました。

3回目の大規模修繕計画案を大幅に見直し

3回目の大規模修繕工事に通常計画されていた、スチールの手摺や玄関ドア、メータ-ボックス扉の更新について、現状を確認し延期する計画にしました。

  • 足場が必要なバルコニ-の手摺の更新 → 4回目の大規模修繕工事に行う。
  • バルコニ-の塗装 → 入居者様の了解を得て、工事に立ち会うことを前提とした。
  • 廊下側の玄関ドアや廊下手摺の修繕 → 日常点検で不具合を判断し、玄関ドアや廊下側手摺は、塗装対応にて更新時期を先送りして計画。

結果

  • 標準的な工事の有り方でなく、小規模な修繕を分散させながら、搬入ル-トを含め居住者に協力を得る形の修繕計画に変更したことにより、修繕積立金の値上げを無事回避することができました。
  • 今後、経年劣化が進行した場合は、バルコニ-等の塗装のみでなく足元補強等の部分補修も必要なことだと、居住者に理解を得ています。また、修繕積立金に余裕ができたため、セキュリティ対策強化や集会室を充実させる計画も予定しています。
  • 高経年物件において、修繕積立金の増額が見込めない中、今後いかに物件を維持していくかは大きな課題です。大規模修繕工事としてすべてまとめて行うのでなく、管理組合の予算状況に応じて工事内容を分割し、状況に応じた必要最低限の小規模修繕を繰り返し行うことは有効な手段だと考えられます。


※イメージ写真

苦労した点・工夫した点

主にバルコニ-手摺の塗装や部分修繕対応については、通常ならば大規模修繕の時期に行うため、足場から施工をしますが、今回の計画では住戸の玄関からというイレギュラ-な施工ル-トとなります。居住者には不便を感じさせる計画となっていますが、修繕積立金の値上げを回避しつつ、建物の価値を守る方法として納得いただくため、工事内容についてはしっかりと説明させていただきました。

居住者の声

改善案は、施工ル-トなど不便さを感じる計画内容でしたが、この計画を視野に入れざるを得ないとして前向きにご理解を得られ、資金計画の改善につながりました。

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受賞事例

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