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  • 2013.04.01掲載

国産の無垢材を使った”木のマンションリノベーション”

ライフスタイルは、時の経過とともに少しずつ変化していきます。居住者のライフスタイルに合わせて快適なマンション暮らしを維持する提案を、専門家が事例を交えながら紹介します。
今回は、国産の木材を使ったマンションリノベーションを提案しているマスタープラン一級建築士事務所をご紹介します。

私たちはマンションリノベーション、特に杉やヒノキなどの国産の無垢材を使った木のマンションリノベーションを専門に設計監理を行う設計事務所として活動しています。
近年、マンションの内装でも無垢材などの自然素材が使われるようになってきました。一昔前はシックハウスやアレルギーに敏感な方が多かったものが、最近はもっと気軽に木を求める方が増えてきていると感じます。住まい手の意識が『より安心なもの』『より優しいもの』『国産のもの』を求める傾向にあると言えると思います。

◆無垢フローリングで気をつけないといけない騒音

さて、マンションで無垢材、特に床フローリングに無垢の木を使う場合、騒音が問題になるケースも増えています。一般的なマンションの床材は踏むとフワフワする『合板遮音フローリング』で、あの柔らかさに騒音を低減する秘訣があるのですが、無垢材は表面が硬くなるため、騒音そのものが大きくなるうえに低減させるのも難しいのです。

リフォームの際に既存の合板遮音フローリングの上に無垢材を重ね貼りする施工も見かけますが、これはNGです。研究機関で測定してみると、LL45の性能がLL60程度まで悪化します。また防音マットとして売られている商品も実際に測定すると同じような性能しか出ないものが多くあることが私たちが行った実測でわかってきています。

無垢床をマンションで施工する際は、浮き床と呼ばれる乾式二重床を使うことが最も確実に性能を確保する方法です。

◆マンションと断熱

その他、私たちがリノベーションの際にご提案するのが窓や壁などの断熱改修です。戸建てよりは暖かいといわれるマンションですが、南北の温度差が大きいため、リビングは暖かいけれど北側の部屋は寒いとか、窓や壁の結露やカビの悩みはとても大きいのが現状です。また、角部屋や最上階、1階の物件では外に面する面積が大きいため、夏の暑さや冬の寒さは戸建てとはまた違う厳しさがあります。

マンションで快適に暮らすために、壁に断熱材を設け、窓には内窓をつけ、熱を逃がさない(入れない)ようにすることで、結露やカビが解消するのはもちろん、冷暖房費が格段に減ります。冬の朝のリビングが無暖房で20度ほどになるという家もあり、こうなると暖房機に頼らなくてもいい暖かい家になります。

◆住みやすいマンションリノベーションのプランニング

新築や販売中のマンションの間取りを見てみると、ほとんどが同じような間取り。部屋数のみ確保され、対面キッチンにダイニング、リビングの横には和室、水周りは家の中心にコンパクトに、といういわゆる一般的な間取りは住んでみると、細切れの部屋は暗く狭く、風通しも悪く、収納が少ないため物があふれ、寒い部屋は納戸になり……

ご依頼頂く方の不満点やご要望は驚くほどの共通点があり、お仕着せのマンションの間取りが多くの家族のライフスタイルを賄いきれなくなっている現状が垣間見えます。

その家族にとって一番住みやすいプランニングは家族の数だけあるといえます。ですが、私たちが一番大事にしているのは、窓をちゃんと活かす、ということです。窓からは光や風、眺望など気持ちのいいものが得られますが、マンションリフォームでは窓を増やすことも移動することもできません。しかし現状は、南側の明るい窓の前にしかテレビが置けなかったり、せっかく窓のある部屋が物置になっていたりします。

そういったもったいない部分を解消することからプランニングを始めます。物置になっている部屋に窓は必要ないので、その窓はお風呂の窓として活用する。そうすれば窓付きの明るいお風呂になるうえに、風も通りよくなり、内部もよく乾きます。日が入り明るい窓はリビングやダイニングという家族の団欒の場所として最大限活用できるように設計します。

特にマンションは東西に長い建物であることが多いので、南北の温度差、気圧差があります。南北の窓同士の経路を確保してやるだけで驚くほど風通しは変わります。その際、ドアは開け閉めの邪魔になるだけでなく場所も取りますので、なるべく引き戸にすると、驚くほど生活しやすい家となります。