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  • 2012年冬号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆快適な暮らしが持続しない?

いつ行っても誰もいないジャグ ジー。快適だよね。これがあるからこのマンションに住んでいるんだ!


いったい誰が使うんだろうか。 温泉なんて。そんな暇なやつがこのマンションに住んでいるのか? どうせ、誰も使わないのなら、潰つぶしてしまえ!


え !? マンション内コンビニをやめるのですか? あそこの焼き立てパンは、私の毎日の楽しみだったのに…。

◆マンションの共用施設

マンションには戸建て住宅地にはないような豊かな共用施設がみられます。


集会所だけでなく、ロビー、ラウンジ、パーティールーム、料理 室、ライブラリー、カフェ、ゲストルーム、大浴場やサウナ・温泉・スパ、キッズルーム、展望ラウンジ、フィットネス・ジム、シアタールーム、庭にはテニスコートやプール、庭園など。


本当に部屋の中にこもっていてはもったいないほどの魅力的な施設があります。


マンションの起源ともいえる、大正14年につくられた東京御茶の水の「御茶の水文化アパート」は、みんなで豊かな共用施設、共同サービスを持つ住宅として登場しました。


1階には店舗、社交室、宴会場、カフェ、地下には駐車場や洗濯場を整備。ほかに洗濯や掃除のサービスがあったのです。この住宅は、アメリカから帰国した北海道大学森本教授が企画しました。


様々な施設やサービスをみんなで共有することで、「能率の高い進歩的な生活を送って1人で2、3人分の働きをしよう」と願ってのことです。1戸では持てない、サービスや施設を、みんなで持つのは効率的ですよね。


こうして、日本でマンションが本格的に広がっていきます。そのブームをつくった、マンションパイオニアの代表ともいえる、「コープオリンピア」が昭和40年、原宿駅前につくられました。ここにはロビー、フロント、管理事務室、医務室、来客用宿泊室、ランドリー、集会室、店舗・レストラン、喫茶店など、豊かな施設とサービス付きで販売されました。まさに、憧れの住宅の登場です。

◆でも問題はランニングコスト

買う前に、きらきら光ってみえていた施設やサービス。

住んでみると意外に重荷になることがあります。


そうです。きらきらしていたものには、維持するのにお金が掛かるのです。

ゲストルームであれば、清掃やクリーニング代。プールがあれば、水代だけでなく、

消毒や清掃、安全確認のためのスタッフの雇用も必要です。

ランニングマシーンが故障すると修繕や取換え部品も必要です。

これらを維持するのは、管理組合です。誰も使わないと使用料が入らない。

施設運営の赤字が続き、管理費で補填していると、管理費がどんどん上がってしまいます。

使用料を上げると、益々使わなくなる人も増えてしまいます。


では、どうすればいいんだと頭を抱えている理事長さんも少なくはないのではないでしょうか。