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  • 2011年秋号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆マンションの強さ

マンションはめんどうだな?と思われるかもしれませんが、実は、マンションの強さも確実に明確になりました。

●全員参加型組織の存在
マンションには全員参加型組織、管理組合があります。管理組合と自治会、あるいは防災会等がマンション内ですぐさま機能したケースは少なくありません。役員による即座の安否の確認、非常用館内放送や掲示板を使っての情報伝達、水の運搬や確保など、すぐに臨時理事会や対策委員会を設置し、生活支援・復興に向けて組織的な対応が行われました。

●共用施設の存在
マンション内にある共用施設や設備も有効に機能しました。受水槽に溜たまっていた水をすぐさまコントロールし、各世帯に行きわたるようにしたマンションも多いです。あるマンションでは、受水槽に毎日2トン、市から給水してもらい、近隣住民にも配りました。

集会所は余震が続く不安な人たちの緊急避難場所になり、その後は救援物資の受け取りの場、地域の人にとっても情報や救援物資の収集の場となり、地域の拠点となりました。津波の際に、避難ビルに指定されていたマンションでは、近隣の人が多く避難し、救命に寄与したのです。
●支援者の存在
日常的に管理組合を支援する管理員がその場にいたこともマンションの強みでした。組合役員が不在のなか、即座に、ハンドマイク等で津波警報が出たことを呼びかける、1戸1戸安否の確認をしてまわり、高齢者の避難を誘導しました。また、2次被害を防ぐために、温水器の水抜きを各住戸に依頼する、水の運搬、ガスの開栓の立ち合い、避難所まで行き地域 の正確な情報収集に努め、情報伝達などが行われました。

◆弱みを無くし、強みを大きく

「備えあれば憂いなし」です。特別なことではなく、管理組合の体制をきちんと整え、災害に備えたリスクマネジメント体制をもつことです。ぜひ、みなさまのマンションも災害に備えて、「困った」点をチェックし、マンションの強みを大いに発揮できるようにしましょう。

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。