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  • 2023.01.04掲載

マンション管理適正評価制度って何?

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

 マンションのエントランスに★★★★★のステッカーが貼ってあったけれど、あれは何だろう。うちのマンション、レストランでもはじめたのかな。どうせすぐに売って出ていくから、関係ないか……。
 (天の声)今年の総会で、マンション管理適正評価制度に登録するって議案にありましたよね。★はマンションを売却するときに役に立ちますよ。関心をもってくださーい。


●マンション管理適正評価制度がスタート

 マンションのエントランスに冒頭のように★のステッカーが貼られるようになりましたね。マンション管理適正評価制度が2022年(令和4年)4月からスタートしました。
 「マンションを買うなら管理を買え」と言われて久しいですが、何を基準に買えばよいのでしょうか。どのようにすれば、よい管理のマンションと判断できるのでしょうか。いろいろ情報があってもなかなかわかりませんよね。そこで誕生したのが、マンション管理適正評価制度です。どんな制度なのでしょうか。
 マンションの管理の状態を総合的に判断し、その結果をわかりやすく示すために、管理の状態を★の数で示しています。★は「★5」「★4」「★3」「★2」「★1」「★0」の6段階で表示されます。

例:★★★★★(★5)のステッカー

●どんな項目が評価されるの?

 評価項目は大きく5つに分かれます。見ていきましょう。
1.管理体制
 第一の項目は「管理体制」です。マンションの管理の主体である管理組合の適切な運営のための基本的な体制が整っているかに関する項目です。
管理者監事が選任されているか(⇒ 管理者はマンション管理の最高責任者です)。
総会を年1回以上開催しているか(⇒ マンションでは、重要な事項は区分所有者全員が参加する総会で決めます)。
□過去5年分の総会議事録が保管されているか(⇒ マンションの管理や管理組合運営の継続性を維持するために、情報をきちんと生成・保管することが重要です)。
管理規約(以下「規約」)の原本あるいは現に有効な規約があるか(⇒ 規約はマンション内の憲法とも言われています)。
□規約に国の管理計画認定基準として掲げられている項目(専有部分への立ち入り、修繕等の履歴情報の管理、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付)が規定されているか。
□規約は新しい標準管理規約に準じて主要な改正項目が規定されているか(⇒ 必要な項目は、①暴力団等の排除規定 ②専有部分の設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を管理組合が行うことができる定め ③災害時の管理組合の意思決定 ④区分所有者による開口部等の改良工事の実施 ⑤修繕積立金の区分経理 ⑥役員の欠格条件と利益相反取引の禁止規定 ⑦監事の権限 ⑧管理費等の滞納に対する措置 です)。

2.建物・設備
 第二の項目は「建物・設備」です。安心した暮らしを送ることができるか、法律で決められた検査や点検が実施され、長期にわたって建物を維持する体制が整っているかに関する項目です。
□特定建築物定期調査、 建築設備定期検査、昇降機(エレベーター)定期検査、専用水道定期水質検査、簡易専用水道管理状況検査、貯水槽の清掃、浄化槽の保守点検・清掃・定期検査、消防用設備等点検、自家用電気工作物定期点検の実施状況及び報告書の保管があるか。
□長期修繕計画が作成されているか(⇒ 計画的に修繕を進めるために必要なものです)。
□修繕履歴情報(直近5年間)があり、共用部分の工事に関する図面等が保管されているか(⇒ 長期にわたって維持管理するには、過去の修繕履歴等の情報が必要です)。

3.管理組合の収支
 第三の項目は「管理組合の収支」です。健全な会計の状態であるかに関する項目です。
□管理費会計と修繕積立金会計の区分経理がされているか。
□修繕積立金会計から他の会計(管理費会計等)への充当がされていないか(⇒ 修繕の費用が足りなくならないように、管理費と区分して積み立てておくことが必要です)。
□修繕積立金は、計画期間の推定工事費よりも積立金累計額の方が多いか。そして管理組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入どおりに徴収されているか。
□管理費の滞納住戸数は3%以内か。滞納期間は6か月未満か。3か月以上の滞納率は10%以内か。
□修繕積立金の3か月以上の滞納率は10%以内か(⇒ 管理費・修繕積立金の長期の滞納者をなくす速やかな対応が必要です)。
□修繕積立金の額が著しく低額でないか(⇒ 必要な資金がないと修繕は実施できません)。