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  • 2021.04.01掲載

みんなに情報をどう伝える?

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

●理事会で話し合った情報等を「かわら版」で

 IT化、WEB会議など、パソコンやスマホ、タブレットを1日中見ていることが多くなったご時世だからこそ「かわら版っていいよ」という声が聞こえてきます。温かみのある紙の広報誌にほっとすることもあります。
 新潟県の390戸のマンションの「かわら版」についてご紹介しましょう。
 話合いがうまくかみあっていない総会にある居住者が出た際、いろんな情報を分厚い資料で区分所有者にドカンと届けるのではなく、簡単な形でもっとこまめに知らせていたら、区分所有者相互の理解や管理への関心が高まるのではないかと考え、広報誌の発行を引き受けたのです。この「かわら版」は理事会の承認のもと発行しているもので、理事会で話し合ったことを即座に伝え、時にはみなさんの意見を聴取するツールとしても使われています。例えば、「2億円をかけて自走式駐車場を造る」という試案が出され、理事会では議論が白熱。賛否を問うアンケート調査が「かわら版」を通じて行われ、自由な意見を書いてもらいました。その意見を集約し、「かわら版」で ①の意見、②の意見……として紹介したところ、住民説明会には「かわら版」を持って居住者が参加。「私は①の意見に賛成」「②の意見を見て私の考え方は変わった」などの意見や感想を出し合いながら話合いが進み、賛成、反対という対立がない形で方針が決まりました。マンションに住む人たちの様々な思いや気持ちを知り、他人を思いやる和やかな雰囲気で事が進んだようです。
 広報誌の活用として、コーナーを作り、地域の情報やお薦め料理などの生活に関する情報を載せたり、イラストや図などを駆使して読む側の関心を高める工夫をしている例もあります。

●多様なツールを上手に活用

 マンション内の情報共有は、WEBを使って行われることが増えてきました。また、ITを活用した理事会・総会を検討されているマンションも多いと思います。だからこそ、マンションのすべての人に情報が確実に伝わるように、広報誌の活用もぜひお考えいただければと思います。
 「齊藤さん、広報誌って大変なんですよ」という声が聞こえてきます。でも、首を長~くして待っている人もいるのです。「広報ならお手伝いできますよ」という方もいらっしゃると思います。これを機に、新たにメンバーを募ってみるのはいかがでしょうか。多様なツールがあるからこそ、マンション内の情報の共有、マンション外への情報発信、急いで伝えるべき情報、確実に手元に残したい情報など、その性格と意図を考慮し、上手に情報伝達ツールを選択していただきたいと思います。




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齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞、都市景観大賞優秀賞、グッドデザイン賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。