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  • 2013.07.01掲載

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日々の管理から老朽化に伴う修繕や建替えまで、マンション管理にまつわる問題は年々多様化し、マンション管理組合が果たす役割の重要性が増しています。マンション管理組合が会員となる組織が各地で設立され、相互協力のネットワークが確立されてきました。
その中でも特に自治体や公共団体とともに、地域に根付いた活動をしているマンション管理組合ネットワークを取り上げるこのシリーズ。
第2回目は、江東区と協力して活動している江東・マンションふぉーらむ21の取り組みをご紹介します。

◆有志の活動に区長が賛同

「江東・マンションふぉーらむ21」(以下、ふぉーらむ21)は、都内でも歴史のあるマンション管理組合ネットワークのひとつです。事の起こりは1999年、町会のタウンミーティングに集まったマンション住人が、当時の区長との懇談の席で「管理組合運営のノウハウを交換する場があれば」と話をしたところ、区の全面的なバックアップを約束されたことがきっかけでした。

翌年4月には第1回交流会を開催。その後2年間で6回の交流会を重ね、有志7名でスタートした会は、2002年正式に「江東・住まいふぉーらむ21」を設立し、2004年に「江東・マンションふぉーらむ21」と改名しました。江東区住宅課の担当者も、夜間や土日の会合にも精力的に参加し、文房具類の提供、交流会会場の手配などに尽力しました。

「第1回の交流会の案内は、区からいただいていた区の封筒を使用させてもらいました。おかげで信用してもらえたのと、また区内で初のマンションの勉強会ということもあって、当日は会場から人が溢れてしまうくらいの大盛況だったんです」と語るのは、ふぉーらむ21会長の小林正博氏。設立当初からのメンバーです。

ふぉーらむ21は会長の小林氏をはじめ役員が11名、その他のスタッフを含め計13名。会員は、個人会員が64名、管理組合20団体で構成されています。活動内容は、月1回の定例会と年1回の総会があり、そのほかに年3回の交流会を主宰しています。交流会は毎年7、11、2月あたりに行われ、40人から多いときでは100人を超える参加があります。江東区在住の人だけでなく、参加費の500円を払えば誰でも自由に参加できるのが特徴で、会長をはじめ役員の皆さんも毎回参加費を支払っているそうです。

◆人口が増え続ける江東区

江東区は、そのほとんどが江戸初期に始まった埋め立てによってできた土地です。東西線を境にして北には7大副都心のひとつ・亀戸、下町情緒溢れる深川や門前仲町、緑豊かな親水公園のある東陽町などを擁し、南には豊洲・東雲・有明などいわゆる湾岸エリアに新しいタワーマンションが林立しています。

広い土地と水運を生かした工場地帯として発展した江東区には、大規模工場が多く立地していましたが、現在は工場等の土地利用転換が進んで公的賃貸住宅や民間マンションとなっているため、大規模マンションが多いのも特徴です。3年前に行われた国勢調査では、賃貸も含めた共同住宅居住者が全体の8割以上。人口は1997年の36万人台を底に、現在48万人台と年々増え続けており、特に近年の湾岸タワーマンションの人気から30~40代の一次取得者層の流入が顕著です。

「湾岸地域のマンションを中心に、若い世帯の流入が続き、活気あるまちづくりが進んでいます。ふぉーらむ21にも若い会員が多く、タワーマンションのコミュニティの在り方などについて真剣に考え、新しい風を吹き込んでくれているそうです。ただ、他地域と同じように旧耐震のマンションが分譲で2割ほどあり、大規模修繕に加えて、これまで以上に耐震改修や建替えが課題となってくると考えています」と、江東区都市整備部住宅課長の老川和宏氏は言います。

◆相互に高め合えるフラットな関係を

最後に、管理組合ネットワークと区とが協同していることの利点について、それぞれに教えていただきました。

ふぉーらむ21が区の支援を得られたことについては、交流会の会場手配、会場費の減額、講師の派遣等の支援やマンションにとって有益な情報を教えてもらえるなど、さまざまな点で助けられたそうです。なかでも「やはり、区の支援を受けている機関だということで一般の方にとっての信頼度が増すこと」(小林氏)が最もよい点ではないかとのことでした。

一方、「各分野の専門家を招いたふぉーらむ21の交流会は参加していて大変勉強になります。また、区民の生の声が聞ける貴重な場でもあります」とは、老川氏。お二人のお話の端々には、“フラットな関係”という言葉がたびたび登場しましたが、交流会の参加費は参加者全員が払う、交流会ではふぉーらむ21の役員も一緒に話し合うなど、主宰者と参加者、官と民の分け隔てをしない関係は、お互いが協力し合いながら高め合える、官民の理想的な関わり方のひとつではないでしょうか。

ふぉーらむ21のHPには、「各々が居住しているマンションの問題をみんなの経験と知恵で解決していくことを目標にしています」と書いてあります。その言葉どおり、会員から相談事があっても“指針”を示さず、“一緒に考える”ようにしているとか。なぜなら、あるマンションが抱える問題はそのマンション独自のもので、管理組合が主体的に解決していく姿勢が大事と考えているからです。あくまでもそのための“手助け”をするのがふぉーらむ21の在り方。それこそが、会が長続きする秘訣だと、小林氏は話してくれました。