トップページ > 連載 > 地域コミュニティシリーズ > 仙台市のマンション管理組合理事長が語る「東日本大震災」
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  • 2011年夏号

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仙台駅から地下鉄で10分とアクセス便利な好立地に建つ「葉山町パークマンション」。
管理組合理事長の佐野豊氏は学生時代に宮城沖地震、単身赴任先で阪神、淡路大震災、そして東日本大震災と度重なる震災に遭遇しながらも、たくましく活動されている。

マンション竣工と同時に入居し住み始めて21年。10年以上前に1年間理事長を務め、現在は2度目の就任で7年目になるという佐野氏。3月11日に発生した東日本大震災では、連続して起こる大きな揺れに戸惑ったと話す。

「地震発生当日の11日深夜は、停電の暗闇の中、居住者の安否確認と緊急用の伝言をするため、80戸すべてを巡回しました。凍える手で玄関ドアをノックし応答を待つ間に見上げた星空の美しさが印象に残っています」。

地震発生後、すぐにマンション建物の破損部分の調査を行ったところ、屋上にある高架水槽が破裂、揺れの大きかった最上階では通路のつなぎめに設置されていたエキスパンション・ジョイントが落下していた。全戸の水道が使えなくなったので、「マンション入口の屋外の共用栓の水道を使って緊急の水汲み場を設置しました。エレベーターも止まってしまったので住民の皆さんが使う生活水は水汲み場から階段を使って各部屋に運んでもらいました」。佐野氏はご高齢の住民のため、階段途中に休憩用の椅子を設置したり、昇る人を優先に左側通行にするなどのルールも決めた。その後掲示版を制作し、毎日のように緊急の通知を行った。

「マンションの損壊部分の写真を掲載し危険場所を知らせました。マンション入口にある緊急の水汲み場の場所や近隣にあるガソリンの販売所、小さな子どもさんがいる家庭もあるので、おむつが購入できる場所などライフラインに関わることなども告知しました」。日頃からホームドクターにしている工事業者にお願いし、3月末から、共用部および各戸専有部すべての損傷調査を行った。5月の連休前までに緊急の補修を終わらせたそうだ。

今回の地震を通じて、今まで密ではなかったマンション住民間にコミュニケーションができたそう。「近隣マンションに住んでいる方にも非常用の水汲み場の告知をしていたのですが、こういう災害時なのでマンション住民と近隣住民が自然と情報交換をし始めました。奥様同士で月1回のお茶会話も出ているようです」と佐野氏。

今後の目標を聞くと「今回の震災を機に生まれたマンション住民間の「絆」を大切にコミュニティが継続して欲しい。マンション居住者の高齢化が進んで来ているので管理組合活動を若い人達にバトンタッチ出来ればと思います」と語ってくれた。