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  • 2013年冬号

マンションの駐車場事情と税対策

<記事内コンテンツ>
マンション敷地内駐車場問題の現状と判例
敷地内駐車場の外部貸出し時の課税対象の明確化
マンションの機械式立体駐車場事故対策

敷地内駐車場の外部貸出し時の課税対象の明確化

1 マンション駐車場の外部貸出しを検討する場合の税務上の留意点

マンション敷地内の駐車場の設置率が高いマンション管理組合(以下「管理組合」といいます。)では、組合員の高齢化や家族構成の変化等に伴い、駐車場の空き区画が増加しているというケースも多いのではないでしょうか。駐車場の空き区画が増加するという現象は、単なる施設の遊休だけにとどまらず、管理組合の会計にも問題を生じさせる可能性があります。

つまり、駐車場収入が減少し、管理費会計の収入不足に陥るリスクがあるのです。一般的に、管理費会計の支出を、組合員の皆さんから徴収する管理費収入やその他の利用料収入等に加えて、駐車場収入で賄うような収支構造になっているものと思われますが、収入全体に占める駐車場収入の割合が大きい管理組合ほど、空き区画が増加し、駐車場収入が減少すると、管理費会計の収入が不足し、支出超過、すなわち、管理費会計が赤字になるリスクが大きいと考えられるためです。

このため、管理費会計の赤字を回避し、収支を改善するために、駐車場の空き区画を組合員以外の第三者に外部貸出しすることで、駐車場の空き区画を減らし、駐車場収入の増加を図ることを検討している管理組合の皆さんも少なくないと思います。

そこで、管理組合が駐車場を組合員以外の第三者に貸出すと、法人税等の税金を納める必要がある場合がありますので、駐車場の外部貸出しの検討にあたっては、充分注意が必要です。せっかく、収支改善を目的に、駐車場の外部貸出しを行ったとしても、税負担が生じると、収支は赤字となり、外部貸出しを行わない方がよかったということになりかねません。駐車場の外部貸出しに関する収支を試算する際には、税負担がいくらになるのかを適切に見積もり、検討することが肝要です。

管理組合は営利目的の団体ではないため、基本的に、法人税、消費税等、事業税及び地方法人特別税の税金を納める必要はありませんが、法人税法上、管理組合は人格のない社団等に、管理組合法人はみなし公益法人等に該当しますので、収益事業に該当する事業を営んでおり、これにより課税所得が発生する場合には、法人税、事業税及び地方法人特別税(一定の要件に該当する場合には消費税等も)を納税する義務が生じるのです。

2 マンション駐車場の外部使用に関する法人税法上の取扱い

国税庁は、平成24年2月13日付で、「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について」(以下、「マンション駐車場の収益事業の判定について」といいます。)の文書回答事例を国税庁ホームページに公開し、収益事業に該当する場合と、収益事業に該当しない場合の例示を行いました。

1区画でも自組合員以外に駐車場を貸し出した場合、駐車場の全区画に対する収入が課税対象となるケースとそうならないケースが例示されたことで、税負担額を事前に試算することが可能になり、空き駐車場の有効利用の促進につながるものと期待されています。

マンション駐車場の外部使用とひと口に言っても、空き駐車場の台数、使用可能期間がどの程度なのか等の駐車場の空き状況は個々のマンションごとに異なるものと考えられることから、実際に駐車場の外部使用が行われている場合には、募集方法や契約内容は一様ではないと思われます。このため、「マンション駐車場の収益事業の判定について」においては、マンション駐車場の外部使用が行われている場合に多いと想定される3つのモデルケースについて、法人税法上の取扱いを示しています。

ケース ケース1及びケース2は、空き駐車場を有効活用し、管理組合の収入不足を回避する目的から、積極的に募集を行い、駐車場の外部使用を行っている場合です。区分所有者の駐車場使用に一定の優先性が認められない場合には、駐車場使用の全てが収益事業に該当し、一定の優先性が認められる場合には、外部使用部分だけが収益事業に該当することになります。また、積極的に募集を行っておらず、外部者からの申出に基づく、臨時的・短期的な外部使用については、独立した事業とは言えず、区分所有者のための共済的事業を行うにあたっての付随行為とみなされ、収益事業には該当しません。