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  • 2013.07.01掲載

特集 取材レポート 夏本番! マンションでできる節電対策

株式会社住宅新報社 取材

<事例タイトル>
太陽光発電システムで共用部の電気代を大幅削減
高圧一括受電で電気代を4割削減
緑と風の力を利用したマンションの節電

《高圧一括受電導入事例》高圧一括受電で電気代を4割削減

◆低圧と高圧の価格差を利用

広々とした敷地に緑が並ぶ大規模マンション 千葉県にある総戸数721戸の大規模マンション。ゆったりとした敷地には、水景施設や遊具のある広い中庭があり、大浴場やカラオケルーム等の共用施設も充実したマンションです。そこでは2009年11月に高圧一括受電システムを導入し、共用部の電気料金が4割削減できたといいます。さっそく管理組合理事長の繁野豊實氏にお話を伺いました。

「導入のきっかけは、高圧一括受電を扱う業者から話があったことでした。共用部の電気代が4割安くなるという提案は大変魅力的でしたが、そもそも“高圧一括受電”とは何なのか、理事の中にもその仕組みがよくわからない人が多く、その理解から始める必要がありました」と繁野氏は言います。

高圧一括受電とは、一般家庭で使われている低圧電力より価格の低い高圧電力を使用することで電気料金を削減する仕組みのことです。

高圧電力から低圧電力へと切り替えるための変電設備が導入された このサービスを展開する仲介事業者が、東京電力などの電力会社と一括して高圧電力の契約を結び、マンション内に設置した受変電設備によって低圧に切り替えてから共用部・専有部に電力を送ります。システムの導入費や保守・点検などのサービス・運営費は価格差から償還されるため、初期のコストがかからないうえ、共用部のみの削減プランならおよそ10~50パーセントの電気料金を削減できるとあって、最近では新築マンションを中心に高圧一括受電システムを導入するマンションが急速に増えています。

◆全戸の合意が最大の難関

繁野氏のマンションでは、このシステムについて理事会の議題に上がったのが2006年。それから実に3年の年月をかけて、導入にまでこぎつけました。まだ当時は高圧一括受電が一般的ではなく居住者の間に不安があったこと、担当事業者が電気という大事なライフラインを任せるに足る会社であるのかの見極めなど、越えなければならないハードルはいくつもありましたが、中でも最大の難関は100パーセントの合意をとることでした。

マンションでは通常、低圧電力の契約を各戸がそれぞれ供給区域の電力会社と結んでいます。高圧一括受電を導入するにはこの契約を一旦解除し、サービス事業者と契約を結び直す必要があるのです。つまり、契約切り替えの同意書をすべて回収しなければならず、結果的に全戸の合意が必要となるのです。

繁野氏が当時のご苦労を語ってくれました。「居住者への全体説明会は専門家である事業者の方にも参加してもらい、何度か開催しました。アンケートを配ったり、相談会を催したり、最終的には申込書を集める際に1戸1戸に説明をして回ったと聞いています。結果、全戸からの同意を得てサービス導入が決定したのが2009年9月。その後は少しでも早いほうがいいと、同年11月に工事を実施したんです」。

◆浮いた管理費を修繕積立金に

理事長の繁野豊實氏 導入後は、年間1200万円台だった電気料金が毎年700万円台に。毎年500万円台の電気料金削減が実現しました。余剰分は修繕積立金会計に回す予定です。心配していた電力の供給状況も以前と全く変わりがなく、サービス事業者の定期メンテナンスにも満足していると言います。

「共用部で最も負担が大きいのが照明やエレベーターの稼働に使う電気代です。高圧一括受電は、初期のコストがかからない上に電気代が大幅に削減できる大変魅力的なサービスだと思います。ただ事業者の選定は、財務内容や株主構成などを管理組合でしっかり調べて慎重に行ったほうがいいと思います」(繁野氏)。

また、最難関である合意形成については、「サービスのメリットを明確に全居住者に説明すること、時には専門家に話をしてもらうことも必要です。また、このサービスは共用部にのみ適用されるので、『なぜ専有部の電気代が安くならないのか?』という方もいます。しかし、共用部の費用を抑えることは、管理費の値上げ抑制や資産価値の維持にもつながり、ひいては自分たちのためになるという認識を一人ひとりが持つことが大事だと思います」と、繁野氏は教えてくれました。