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  • 2010年春号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆困っている自転車置き場

すぐ解決しなければならないわけではないけれど、慢性的に困っている、自転車置き場の問題がありませんか?

「自転車置き場のスペースが足りないようだ。増設を考えなければならないけれど、これは共用部分の変更にあたり、総会で4 分の3以上の合意がいる。それは大変だから・・・」とお困りではありませんか?

自転車置き場の問題は、「足りない」だけでなく、「自転車が盗まれた」「自転車がいたずらされる」「マンション居住者以外の自転車が置かれている。あるいは捨てられている」などがあります。

平成20年度のマンション総合調査を見ても、違法駐輪の問題は、過去1年間に発生したトラブルのなかで、生活音、ペット飼育、違法駐車の問題に続き、第4位になっています。

その原因の1 つに駐輪スペースが足りないことがあります。例えば、東京都のある区で築初年以上の全マンションを調査したところ、現在その区では新たにマンションをつくる場合には駐輪場は1住戸に対して1台分を確保することが決まりになっています。しかし、築30年以上のマンションの平均駐輪場整備率は、住戸数に対して58.6.% でした。確かに、不足している ようですね。

自転車が煩雑に溢れていると、いざという時の避難の妨げになる、また救助に来た人の妨げにもなる、さらに放置自転車やいたずらが増える*1、マンションの資産価値が下がる、公道に溢れていると、地域に迷惑をかけることになります。足りないからといって、すぐ増設を考えるのではなく、まずは自分のマンションの自転車置き場、駐輪場を見直してみましょう。

◆見てみよう自転車置き場

①不必要な自転車の見極め
そこに置いてある自転車は皆さんのマンションの居住者のものでしょうか?次に、そこにある自転車は本当に必要な自転車でしょうか?とにかくは、必要な自転車に整理しましょう。その方法として、マンション居住者の自転車と外部の自転車がわかるように、管理組合で専用シール(ステッカー)を作成し、発行します。シールに所有者の棟番号や部屋番号、あるいは登録番号を示すなどがあります。外部の自転車や所有者のいない自転車を明確にすることが大切です。

これを機に自転車の登録制度を導入する方法もあります。「自転車1 台につき○○円」と有料化することで、いらない自転車、もう使わなくなった自転車を処分し、自転車台数を減らすことにもなります。

次に、マンションの居住者に十分に広報したうえで、日程を決めて、シールのついていない自転車に「登録のない自転車なので、撤去してください」旨の警告をつけていきます。

②不必要な自転車の撤去
警告をしても、撤去をしない、新たに登録をもしないものは、マンシヨン内に空地がある場合には、自転車をそこに移動し、鎖などで勝手に持ち出されないようにしたうえで、さらに所有者の確認、そして警察に連絡し、盗難物かの確認をします。

十分な期間を経た後、処分することになります*2。 しかし、取り扱いは所轄の警察署、管理組合内で十分に協議をしておきましょう。

そして、決めたことは自転車置き場の使用細則に定めておきましょう。

*1 環境犯罪学上、こうした所には同じような犯罪が起こりやすい。それは「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」(割れ窓理論)ともいわれている。

*2 民法および遺失物法では、(他人が置き去ったものに対して保管期間原則3 カ月を経過したのち取りに来ない場合て管理組合は放置自転車の所有権を取得するので自ら処分(売却・破棄)ができることになる。