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  • 2023.10.02掲載

ロングスパンでのマネジメント計画を-SDGsの実践とともに-

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

●マンションに安心安全に長く住まう

 SDGsが注目されるなかで、管理不全マンションの出現など、マンションに暮らす責任を果たさない区分所有者、管理組合が存在しています。マンション管理の大切さ、一人一人が主体的に管理への関心を高め、参加することが大切です。
 大量生産・大量消費を背景とした経済成長下において、資源の浪費やCO2の排出などを行ってきた私たちは、いま、その考え方を転換し、持続可能な生産と消費の枠組みのもとで食料廃棄の半減、化学物質や廃棄物の大気・水・土壌への放出の大幅削減、3R(廃棄物の削減・再利用・資源化)などを進めることが必要になっています。これは、マンションを短期で建て替えるのではなく、廃棄物を削減する目標からも大事に長く住まうことの重要さにつながります。

●長期マネジメント計画の立案を

 マンションの建替えはそう簡単にはできないことは明確になっています。だからといって、建物を解体し、敷地を売って共有関係を解消しようというのも、住むところがなくなり、簡単には進められません。そこで、マンションを長持ちさせることを考えることが大切になります。その基本として、長期的なマネジメント計画の立案をお勧めします。
 長期マネジメント計画とは、マンションの長期的な管理運営方針ならびにハード面での維持管理およびソフト面での組合運営の取り組みに関する長期的な計画のことをいい、公益財団法人マンション管理センターが2020年8月に公表したものです。

長期修繕計画は、30年以上の計画ですが、長期マネジメント計画は、その2倍や3倍のスパンで考えること、さらに、ハード面だけでなく、ソフト面への対応も一緒に考えることになります。

 しかし、そんなに長期的なものになってしまうと、そのとおりできるかどうかわからないと考えるかもしれません。
 この長期マネジメント計画は、例えるなら、台風の進路予想図のような役割です。中長期的な見通しとその実現のための取り組みを緩く共有するためのものと考えるとよいのではないでしょうか。

●長期マネジメント計画の内容

 実際にどんなものかをみてみましょう。
①マネジメントの方針を決めましょう。長期のビジョン、長期の目標です。例えば、築50年程度のマンションで「適時適切な修繕と改修で快適な住環境を作り、築80年を目指して若い世代を呼び込み、世代交代を進める住環境を整えよう」といった目標を立てるなどです。

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②マンションの固有の基本情報を整理しておきましょう。所在地、敷地面積、所有形態、法定建蔽率と現在の建蔽率、法定容積率と現在の容積率、竣工年、総戸数、階数、棟数などです。そして、現在抱える課題や将来起こりうる課題も考えてみましょう。③建物のハード面の状況、④管理・運営・利用の状況について、さらに、⑤マンションを取り巻く状況や、⑥再生の方針などを相談し、記載していきます。

●計画を立案する意義

 例えば、「みんなで○○(ある場所)に行きましょう」と言われたとします。ただし、○○はどこにあるのか、いつまでにそこに行けばよいのかが共有されていなければ、みんなで○○に行くことはできません。
 これがマンションであれば、先に例示したような将来的な計画を立案することによって、お住まいのマンションの中長期的なマネジメントの方針や長期ビジョンなどを区分所有者同士が共有できるようになります。
 計画を立案する際にポイントとなるのは、課題とそれに対する取り組み方針を決めること、そのための大まかなスケジュールを決めることです。建物の維持管理に必要な費用も長いスパンで考えることで、長期の推定修繕工事・改修工事内容および概算工事費が把握でき、どの程度の費用負担になるのか、そのために何をすればよいのかが見えてきます。
 その結果、「このマンションは当面建替えはない」とわかれば、安心して専有部分のリフォームもできます。若い世代の入居も期待できます。こうした計画を立案することで、マンションの状態を把握し、課題の共有化とともに、総合的に何をすべきかが見えてきます。人々の安心な暮らしにつながっていくことでしょう。