トップページ > 連載 > マンガで事例研究 > 修繕積立金が足りない?
  • 連載
  • マンガで事例研究
  • 2018.07.02掲載

修繕積立金が足りない?

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

●修繕積立金が足りない理由-みんないくら集めているの?

 どうして修繕積立金が足りなくなるのでしょうか。
 1つには、長期修繕計画の計画期間が短かったのかもしれません。国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン」では、新築時は30年、既存のマンションでは25年以上の計画期間にすることが望ましいとされています。現実にはもっと長い期間を策定している場合もあります。もし計画期間が10年であった場合、大規模修繕工事の費用が見積もられていないために、必要な費用が少なく見えてしまいます。また、もし計画期間が20年であっても、大規模修繕工事の費用が1回分しか見積もられていなければ、これも必要な費用が少なく見えます。ですから、常に25年先まで計画を持つことが望ましいのです。築30年を超えると、エレベーターをはじめとした設備の取り替えなどが必要になってきます。修繕積立金が足りなくなったというのは、このように、必要な修繕の項目がはじめから見積もられていなかったことが一因かもしれません。
 2つめには、修繕が必要なのに、項目に入っていないものがあったのかもしれません。先のエレベーターの取り替えなどもそうですが、機械式車庫の取り替え費用などが見積もられていない場合もあります。建物に気を取られて、設備や施設の修繕や取り替えの費用が欠落している場合があります。必要な項目がきちんと加味されているのかのチェックが必要です。
 3つめには、はじめから将来の値上げが予定されていたのかもしれません。これから先の30年間に必要な修繕の費用を算出し、それを30年で割って年間に必要な修繕積立金額を算出する「均等割方式」が採用されているのではなく、はじめの5年間ほどは修繕積立金額を抑え、のちに上がっていく「段階的に上がる方式」が設定されている場合です。この場合は、当然、将来的に積立金の値上げは必要となります。
 4つめには、予定をしていた通りに、管理組合に収入が入ってこない場合があります。計画修繕のための費用は、各区分所有者が支払う修繕積立金だけでなく、駐車場料金として集めている収入の一部を充当するケースが多くなっています。
 例えば、国土交通省の平成25年度「マンション総合調査」によると、修繕積立金会計収入のうち、駐車場料金などの使用料・専用使用料からの充当額は、250戸程度のマンションなら、平均で戸当たり月額1,690円なので、毎月約42万円の収入が見込まれます。しかし、駐車場が70%しか埋まっていない場合は、約12万円の収入減となり、それを250戸で補うには、戸当たり月額約500円の費用負担増になります。駐車場の空きが続くようなら、将来的に会計の見直しが必要となってきます。
 そのほかにも、予定よりも早く修繕が必要になった、傷みがひどく、修繕費がかかるなどの理由もあります。さらには、原状維持の修繕だけでなく、現在のマンションの水準に合わせて「オートロックにしよう」「宅配ボックスを設置しよう」「耐震改修工事をしよう」など、価値向上型の工事が付加される場合も、必要な費用がアップし、費用不足となります。
 ですから、不足の原因をしっかりと把握することが必要です。
 なお、修繕積立金額の平均は、戸当たり10,783円/月、使用料なども充当した場合には戸当たり11,800円/月になっています(表-1参照)。



表-1 マンション修繕積立金額(平均月額)円

  使用料など充当額を含む 使用料など充当額を含まない
戸当たり ㎡当たり 戸当たり ㎡当たり
平均 11,800 164 10,783 149
20戸以下 13,150 191 12,328 179
21~30戸 10,872 150 10,324 143
31~50戸 11,203 160 10,243 144
51~75戸 11,587 169 10,749 156
76~100戸 12,273 164 11,517 154
101~150戸 12,221 160 11,040 143
151~200戸 12,921 165 11,035 151
201~300戸 11,675 153 10,188 135
301~500戸 12,018 140 10,255 117
501戸~ 16,509 250 12,766 189

国土交通省 平成25年度マンション総合調査より

●マンションの経営を

 駐車場の空きが続くようなら、外部に貸すこともできます。ですが、貸し方には十分ご注意ください。外部使用部分だけでなく区分所有者の使用も含め、その全てが収益事業にみなされてしまう場合があります。そのため、スペースの設定、貸し方のルールに配慮が必要です。
 また、メンテナンスやランニングコストのかかる機械式車庫を平面式車庫に切り替えることも考えられます。
 修繕積立金の不足は、何が原因かをしっかりと見極め、今だけではなく、将来も見越し、マンションの収入と支出のバランスを考えるようにしましょう。マンションの管理にも経営の感覚が必要です。そして、修繕積立金の意味をしっかりと理解してもらえるように、区分所有者、居住者に広報していきましょう。



表-2 空き駐車場の貸し方により収益事業に見なされるケース

ケース1募集を広く行い、使用許可は区分所有者かどうかを問わず、申し込み順とする。
使用料金、使用期間など、貸出条件において、区分所有者と非区分所有者との差異はない。
⇒ 外部使用部分のみならず、区分所有者の使用部分も含め全てが収益事業に該当する
ケース2区分所有者の使用希望のない場合にのみ非区分所有者への募集を行い、申し込みがあれば許可をする。貸し出しを受けた非区分所有者は、区分所有者の使用の希望があれば、早期に明け渡す必要がある。
⇒ 外部使用部分のみが収益事業に該当する
ケース3区分所有者の使用希望がない場合でも、非区分所有者に積極的に募集をしない。非区分所有者からの申し出があり、空き駐車場があれば、短期的な非区分所有者への貸し出しを許可する。
⇒ 区分所有者の使用部分のみならず、外部使用部分も含め全てが収益事業に該当しない



「解決!ひろこ先生 マンション暮らしBOOK」発売中!

齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション2025ビジョン懇話会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。