ホーム > バックナンバー(第1回)

弁護士 篠原みち子先生のマンション管理お役立ちコーナー

【相談事例 目次】

相談事例

震災への備えとして、地域の行政機関より津波時の避難場所として当マンションを「津波避難ビル」に指定したいとの協力要請がありました。
総会において「津波避難ビル」の指定を受諾することを決議する場合、決議要件はどのようになりますか?

篠原先生の回答

津波避難ビルの指定を受諾した場合に、管理組合側がどのような義務を負うのか、その内容は自治体によってかなり違うようですし、それによって回答も変わってくると思います。そこで、ここでは単純に「津波時に避難してきた近隣住民を上階の階段室または廊下に受け入れる」義務だけを負う、という前提で考えてみます。 このような場合は、規約にその旨の記載を行うのであれば特別決議が必要になりますが、規約に記載するのでなければ、津波時における共用部分の用法に関する問題であり、管理に関する事項と考えられるので、普通決議でよいと考えます。 もっとも、この考え方に対しては、共用部分等の維持管理を行う管理組合の業務の範囲外ではないかという別の考え方もあるでしょう。しかし、自治体からの協力要請ですし、災害時に近隣住民との支え合いがなければ地域やマンションの被害はより大きくなるわけですから、防災が管理組合の業務であることからしても、肯定してよいと思います。

【参考】

○マンション標準管理規約(業務)
第32条  第1項   
管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。   
十三 防災に関する業務

相談事例

総会で修繕積立金を戸当たり平均月額2,000円値上げすることを提案したところ、一部の出席者から強い反対意見があり議案の審議が進まなくなってしまいました。そこで出席者から値上げ幅を下げてはどうかとの意見が出たため、値上げ幅を1,800円に修正して改めて承認を諮ったところ賛成多数で承認されました。このような総会決議は有効でしょうか?

篠原先生の回答

総会では、あらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができるとされています(区分所有法第37条第1項)ので、本来であれば、議案上程している金額で理解が得られるよう説明し合意形成がなされるべきところですが、今回の場合、修正された値上げ幅が上程している金額の範囲内ですし、1,800円になったことにより値上げの目的が達成できないという特段の事情もなさそうです。そうだとすると、招集通知の内容から予見できる範囲の修正案といえますので、決議は有効であると考えます。 なお、修繕積立金の改定は、一般的には普通決議で実施できます。ただし、具体的な修繕積立金の額が規約に定められている場合は、規約の変更に当たり、特別決議が必要になりますので注意してください。

【参考】

○区分所有法(決議事項の制限)
第37条  第1項
集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。

相談事例

大規模修繕工事の実施を控えて専門委員会の設置を検討しています。
専門委員会の設置は、理事会決議でできますか。

篠原先生の回答

専門委員会の設置は、管理に関する事項と考えられるので、本来は総会の決議(普通決議)が必要になります。
ただし、管理に関する事項は規約に別段の定めをすることができますので、規約に専門委員会の設置を理事会の決議事項と規定することは可能です。 なお、マンション標準管理規約では、専門委員会は理事会で設置することができると規定されています。

【参考】

○マンション標準管理規約 (専門委員会の設置)
第55条  第1項
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。

相談事例

理事会において持ち回り決議、または書面決議をすることはできますか。

篠原先生の回答

理事会を開催せずに書面やメール等で理事会の決議をすることができるとする考え方もあるようです。
しかし、理事会は、総会で直接選任された理事が実際に集まって種々の議題について審議し最もよい結論を導き出すということに意義があるので、持ち回り決議や書面決議は好ましくないと考えます。

相談事例

臨時総会で議長を務める予定であった副理事長が総会を欠席したため、審議に入ることなく流会になってしまいました。 再度総会を開催するにあたって臨時総会の議案に変更はありませんが、この場合でも改めて議案書及び出欠票等を配付しなければならないのでしょうか。

篠原先生の回答

改めて開催する臨時総会に前回の出席者が出席できるとは限りませんし、その逆もまた然りです。
議案書も再度使用する前提で配付したわけではなく、現時点で全員が保管しているとも限りません。
よって、再度の総会を開催する際は、改めて議案書及び出欠票等の配付を要すると考えます。