調査・研究

マンション管理事務室における現金のカード決済化推進支援事業の結果の公表

2.分譲マンションにおける決済の現状と課題

 日本クレジットカード協会の統計によれば、主要な業種におけるカード決済の利用シェアにおいては、不動産と教育の分野が最も低いとされている。不動産業というと、売買(売買代金、仲介手数料)から賃貸(家賃)が中心になるが、銀行振込や口座振替が主流であり、いまだに現金決済も行われている。

 分譲されたマンションにおいて日常的に決済される代表的なものとして管理費がある。管理費は、マンションの共用部分、敷地、附属施設などの維持管理に充てられる費用であり、負担するのは区分所有者、徴収するのは管理組合となる。徴収の方法としては、「直接収納方式」と「集金代行方式」の2種類に大きく分けられる。

■直接収納方式と集金代行方式 PDF

 実際にはこうした収納事務を管理組合が取り仕切ることは困難であることから、マンション管理会社に業務委託するのが一般的となっている。収納方法に関しては、上記に加えて、クレジットカード決済に対応した方式も提供され徐々に普及しつつあるが、依然として口座振替が大多数を占めている状況にある。

 管理組合が徴収する費目については、定例的な月次の管理費の他に修繕積立金や駐車場使用料が、その件数・金額ともに全体に占める割合が圧倒的に大きい。その他、少数ながらマンションによっては、非定例・不定期に徴収する費目もあり、それらは口座振替ではなくて現金により徴収しているケースがある。

 当協会の会員社に対する調べ(2015年実施)では、現金取扱いの種類と割合について聞いたところ、随時に収納する費目では現金の取扱いが多くあるという結果だった(下図参照)。

■現金取扱いの種類と有無割合

 マンション内の来客用駐車場や集会室といった共用施設の利用料や、自転車のステッカーやゴミ処理券と
いった物品の販売代金の収納において現金の取扱いの割合が高いことがわかる。

 では、どのくらいの数の管理組合において現金が取扱われているかについて聞いたところ、下図の結果
だった。

■現金取扱いのある管理組合割合

 25社は「全く取扱いがない」、151社は「現金取扱いがある」と回答している。回答のあった176社の管理受託組合数から割合により算出すると、管理組合67,577組合のうちの10,858組合、約16%の割合で現金の取扱いがあると推計される。

 

 続いて、マンションの管理室等で預かる現金の月平均額(最も多い金額帯)を聞いたところ、以下の結果だった。

■現場で預かる現金の月平均額(最も多い金額帯)

 92.1%が50,000円未満で、更に10,000円未満で66.4%となっている。50,000円以上は少ないが、100,000円以上取扱っている管理室等もある。

 なお、下表は現金取り扱いに関するスタンスについての回答をまとめたもので、177社中149社の84.2%が、現金は取扱わない方針としていることがわかる。

 一部には、現金取扱いについては要請があってもお断りしているという会社があるものの、諸事情により取扱っていると回答している会員社が約8割あり、基本的には現金取扱いは避けたいが、やむを得ず取扱っていることが窺える。

 その諸事情についての回答は右表の結果だった(複数回答)。

 自転車ステッカー代等、現金で取扱わざるを得ないものがあると回答した会員社が97社と最も多く、運用上、現金が発生する設備・共用施設があると回答した会員社も94社と次に多い。確かに、コイン式の設備は現金を投入することを前提としているため、回収等の過程で現金の取扱いは避けられない。その他、管理組合・区分所有者からの要請があると回答した会員社が72社あった。上表中の3,4,5の事情があることに加えて、1.口座振替ができない、2.金額が少額、といった理由から現金を取扱わざるを得ない事情もある。

 以上から、多くの会員社が、現金を廃止したいという意向でありながら、やむを得ず管理室等で現金を取り扱っていることがわかる。

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