マンション・バリューアップ・アワード

マンション・バリューアップ・アワード

マンションライフ・シニアライフ部門
(住み心地、居住価値向上、高齢者対応)

部門賞
高齢者見守り活動と
農園芸療法による認知症予防

高取台サンハイツ管理組合法人
日置一夫様

背景

  • 14年前、マンションで高齢独居女性が孤独死するという事案がありました。生前、認知症を患い近隣住民に怒鳴りこむことが頻繁にあったことから、住民が彼女からから遠ざかった結果、起きたことでした。
  • 当時築35年のマンションは、60歳以上の高齢者率が30%にも及び、社会でも高齢者の孤独死や老々介護の問題が顕在化し始めていました。
  • 住み慣れたマンションを「終の棲家」とし、二度と孤独死を出さないために、まずは自助努力としてひとり住まいや高齢者世帯の見守り活動を行い、必要とあれば関連機関や行政に共助・公助を求めるべく、10年間にわたって学習し、知見を積み重ねてきました。
  • 平成30年定期総会に「高齢者見守り活動の考え方と指針」を提案。高齢者見守り活動の推進とともに、居住者緊急連絡簿や高齢者支援の緊急時対策マニュアルの整備などを訴えました。「管理組合の基本的活動から逸脱している。行政がやるべきものだ。」と反対意見もありましたが、「管理組合の業務は建物の維持管理ではあるが、住んでいる人々の命と健康を守ることが最大任務である」と説得。結果、満場一致で可決されました。

目的

  • 「認知症者が安心して共生できるマンションを」を理念とし、超高齢化社会が進む中で、管理組合自らの努力で住みよい環境づくり、生きがいづくりを促進。そして何よりもひとり住まいの高齢者の孤独死を出さないこと、老々介護での共倒れをなくすことを目的としました。

実施内容〈バリューアップ〉

高齢者見守り活動

高齢者見守り活動推進委員会を立ち上げました。委員は6名。医療機関事務長経験者、グループホームと老人ホームの施設長経験者、労組リーダー経験者、消防救命署員経験者、看護師現職、IT技術者現職、土木現場監督経験者と、多彩な人材が揃っています。

具体的には、まず住民の健康に関わるアンケートを実施。本人及び別居家族から見守り対象の希望を募り、管理会社の協力を得て、管理人が見守り対象者を毎朝訪問し安否確認を行うことにしました。

異変を察知したら直ちに委員と遠方家族への連絡。その後、かかりつけ医や介護担当者へ委員会から通報、救急車の手配・入院の手続き・入院中の見舞訪問・退院時の院内カンファレンスへの参加・自宅生活の安全確認等々の実務をこなします。

また、帰宅困難と判断した場合の対処としては、当組織内老人会と医療機関と連携のうえ、介護施設への入所等の手当てを行うスキームになっています。

ラジオ体操・ウォーキング・農園芸療法

コロナ禍による外出自粛で高齢者の健康障害・鬱問題が発生したため、介護や認知症問題、健康問題等をテーマとした勉強会やラジオ体操・ウォーキング等を進めています。さらに昨年度から、健康寿命をのばし、認知症を予防するための農園芸療法への取り組みを始めました。近郊里山に150 坪の農地を借り受け、野菜の栽培をしています。医学的・学問的にも農園芸は五感を刺激し、高齢者の健康維持向上、認知症予防に効果があるとされており、園芸療法士による指導を受ける予定です(コロナ禍で中断しています)。

結果

  • 独居高齢者の見守り活動として、すでに様々な対応事例が積みあがっています。
  • 農園芸療法によって採れた野菜をマンション内で廉価で販売したことで、野菜の料理方法等が話題となり、新たな付き合いも生まれています。
  • こうした活動の裏付けには、信頼できる管理会社との協働が不可欠で、管理組合としてはとてもありがたく思っています。心強いパートナーと強固な信頼関係が構築できているとともに、高齢化問題への取り組みについて両者の新しい関係の模索が始まったといえます。

苦労した点・工夫した点

  • 居住者名簿を作成するにあたっては、見守り委員会委員と理事会構成員全員が守秘義務の誓約をし、個人情報の取扱いに細心の注意を払っています。
  • 安否確認に管理員を充当したので、管理員の時間確保のために年間約百万円を投入し、清掃要員を新規で1名雇用しました。
  • 見守り活動はまさに24 時間であり、家族からの要請があれば深夜であっても安否確認を進めています。
  • 認知症に罹患した住民が、マンション内の花壇の草花を引き抜くことや、スーパーでの度重なる万引き騒動を引き起こしていました。対策として、別居している息子との同居を要請。住民には家族の了解を得て認知症の「公表」を行い、病気として温かい理解と見守りをお願いしました。犯罪行為である万引きについては、委員と家族で店舗側に出向き、認知症である旨の公表を行い、弁済と共に引き続き万引き行為があれば、委員会に通報を要請。さらに、あんしんすこやかセンター等公的機関の助力も求めています。「認知症者が安心して共生できるマンションを」を理念に掲げていますが、現状ではその実現が困難な状況で、当該者は家族の決断でグループホームへの入所が決定しました (子息1 人のため、施設訪問や施設からの一時帰宅への支援等を行う予定です) 。認知症者が安心して住める環境の実現への道はまだまだ遠いと実感しています。

居住者の声

  • 高齢でひとり暮らしの母は、足腰が弱くなり、室内でよく転ぶようになりました。ひとりで立ち上がることが出来なくなる度に、高齢者見守り活動推進委員会委員の方、管理員やマンションの方々が助けて下さいました。母の入院先の紹介や、退院後の老健施設入所手続き等にも同席下さり、本当に心強く思いました。こうして母が元気に過ごせているのも、マンションの皆さんのお蔭と感謝しております。本当にありがとうございます。
  • 実母は2018年12月、満80歳で病気のため亡くなりました。亡くなる1ヶ月前に私が宮城県仙台市の自宅に引き取るまで、ずっと母を支えて下さったのはサンハイツの高齢者見守り活動でした。遠距離ですぐに駆け付けることができない私に代わって、管理組合役員の方々をはじめ管理人から頻繁に声をかけていただいたことで、孤独を感じることなく、元気に過ごすことができたようです。見守り活動と並行して、管理組合の「鍵の預託制度」で自宅の鍵を預けてあったことも奏功して、最期の半年間、入退院を繰り返すようになってからは、役員の方々に居宅内での対応もしていただいたようです。言い尽くせぬほどお世話になり、感謝しております。
  • 恥ずかしながら、母親の認知症発症後も数年、母親の友人、マンションの方々に任せっきりになっていましたが、転勤で大阪勤務になったことや母親の認知症が進んだことから、一昨年から母親と同居することにしました。最終的には、高齢者見守り活動をされている皆さんのアドバイス、ご協力により、半年前に母親をグループホームに入所させることになりました。認知症患者である母親は、様々なリスクを抱えておりましたが、見守り活動により、何とか生活を維持し、認知症発症後数年、幸せな日々を送ることができたと考えています。

など、特に離れて暮らすご家族から多数のお声をいただいています。

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受賞事例

  • マンションバリューアップアワード2020 2020年受賞事例はこちら
  • マンションバリューアップアワード2019 2019年受賞事例はこちら
  • マンションいい話コンテスト2018年受賞作品はこちら
  • マンションいい話コンテスト2018年管理会社編受賞作品はこちら
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