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  • 2014.03.28掲載

特集 4月1日スタート! マンション管理組合の消費税率引上げに関する注意点

公認会計士 吉岡順子

3 消費税率等に関する経過措置の取扱い

平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについては、国税庁消費税室よりQ&Aが公表されています。主なものは以下のとおりです。


1◆新税率(8%)適用の基本的な考え方

①-1
財またはサービス(役務)の提供日で判断する

Q1
施行日前後の取引に係る消費税法の適用関係を教えてください。

A1
施行日の前日(平成26年3月31日)までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、施行日以後に行われるものは、経過措置が適用される場合を除き、当該資産の譲渡等及び課税仕入れ等について新消費税法が適用されることとなります(経過措置通達2)。

解説
どちらの消費税率が適用されるかは、契約日ではなく、実際にモノを購入した日が平成26年3月31日以前なのか、平成26年4月1日以後なのかにより判断します。平成26年3月31日以前であれば旧税率(5%)となり、平成26年4月1日以後であれば新税率(8%)となります。


①-2 
一定期間まとめて請求される場合は締日で判断する

Q2
当社は、事務機器の保守サービスを行っており、保守サービスの年間契約(月額○○円)を締結しています。この保守サービスについては、月ごと(20日締め)の作業報告書を作成し、保守料金を請求しています。この場合、施行日(平成26年4月1日)をまたぐ3月21日から4月20日までの期間に対応する保守サービスについては、新税率(8%)が適用されますか。

A2
照会の役務提供契約は、月ごとに役務提供が完了するものと考えられます。 したがって、平成26年3月21日から同年4月20日までの役務提供については、その役務提供の完了した日である4月20日における税率(8%)が適用されることとなります。
(注)1か月分の料金を日割り計算する等により、3月21日~3月31日の期間に相当する金額を算出することも可能ですが、照会のような取引は、毎月20日締めとしている1か月分の計算期間が一の取引単位であると認められることから、その取引単位ごとに同一の税率が適用されます。

解説 月ごとに役務提供が完了する保守サービスの場合には、締日における税率が適用されますので、平成26年3月31日以前の期間が含まれていても、締日が平成26年4月1日以後であれば、新税率が適用されることになります。


②-1 
対価の支払日で判断するのではない

Q3
当社は、事務機器の保守サービスを行っており、保守サービスの契約期間を平成26年4月以後1年間とする保守契約を平成26年3月31日までに締結するとともに、同日までに一括して1年間の保守料金を前受けしています。
なお、この保守契約は、月額○○円として保守料金を定めており、中途解約があった場合には、未経過期間分の保守料金を返還することとしています。
この保守契約に係る取引について、1年間分を一括収受し、前受金として計上したものを毎月の役務提供の完了の都度、収益に計上することとしていますが、この場合において、施行日(平成26年4月1日)以後、毎月の役務提供の完了の都度、収益に計上する際の適用税率はどのようになりますか。

A3
役務の提供による資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあっては、その目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあっては、その約した役務の全部を完了した日とされています(基通9-1―5)。また、前受金に係る資産の譲渡等の時期は、現実に資産の譲渡等を行った時とされています(基通9-1―27)。
照会の保守契約は、契約期間は1年間であるものの、保守料金が月額で定められており、その役務提供が月々完了するものですので、この保守契約に基づき計上した前受金に係る資産の譲渡等の時期は、現実に毎月の役務提供が完了する時であり、その時の消費税率が適用されます。
したがって、施行日以後、役務提供が完了するものについては、新税率(8%)が適用されることとなります。

解説
旧税率が適用されるか、新税率が適用されるかは、平成26年3月31日以前に対価を支払うかどうかによらず、平成26年4月1日以後に役務提供が完了するものについては新税率(8%)が適用されます。このため、平成26年3月31日以前においても、対価を前払いにより支払う場合には、新税率(8%)が適用される支払もあります。


②-2 
4月分を前払いしたら新税率(8%)、後払いでも3月分であれば旧税率(5%)が適用される

Q4
当社は、不動産賃貸業を営む会社ですが、平成25年10月1日以後に契約する賃貸借契約(改正法附則第5条第4項に規定する経過措置は適用されないもの)における次の賃貸料に係る消費税の適用税率について教えてください。
① 当月分(1日から末日まで)の賃貸料の支払期日を前月○日としている賃貸借契約で、平成26年4月分の賃貸料を平成26年3月に受領する場合
② 当月分の賃貸料の支払期日を翌月○日としている賃貸借契約で、平成26年3月分の賃貸料を平成26年4月に受領する場合

A4
新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。
照会①は、平成26年4月分の賃貸料であり、施行日以後である平成26年4月分の資産の貸付けの対価として受領するものですから、4月末日における税率(8%)が適用されます。
照会②は、平成26年3月分の賃貸料であり、施行日前である平成26年3月分の資産の貸付けの対価として受領するものですから、支払期日を4月としている場合であっても、3月末日における税率(5%)が適用されます。

解説
新税率(8%)か旧税率(5%)かは、対価の支払い時期が平成26年3月31日以前か、平成26年4月1日以後かによりません。あくまでも、財またはサービス(役務)の提供日が平成26年3月31日以前か、平成26年4月1日以後かによって決まります。