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  • 2012年冬号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆頑張っているマンションに訪問

みなさん、よく似た悩みを持っていることがあります。そこで、 こうした悩みに取り組んだ経験を もつマンションを訪ねてみましょう。


仙台市の約400戸、32階建てのマンションには、30階には料理ができるスカイラウンジ、 2〜
3階には卓球もできるプレイスタジオ、料理も作れるテラスラウンジ、スポーツジム、スタジオ、保育園、そして1 階には集会室、キッズルーム、ゲストルーム、近隣の人も使える喫茶コーナーがあります。それに立体駐車場に洗車場です。

 

共用施設の悩みは、温水プールでした。過去5年間の使用回数を調べると、月に5・5回しか使わ
れていませんでした。しかし、ガス代と設備の保守代でランニングコストが年間約200万円掛かっ
ていました。あまりに利用者が少ないので、利用料を下げる試みもしましたが、無駄でした。そこで、他の施設の利用状況も見て、多目的スタジオに変えることにしました。


このマンションでは共用施設が使われない無駄な空間にならないように工夫しています。

入居時には多かった子供たちも今は大きくなりました。そのスペースは、介護予防体操をする場になっています。今は、月2回のペースですが、将来的にはもっと本格的に取り組んでいく予定です。

さらに、オートロックのそとにある喫茶コーナーは、利用の少なかったギャラリーを用途変更した
ものです。


震災時には、1階のキッズルームはエレベーターが停止している 間の一時避難スペース、洋室ゲス
トルームは車椅子の方の宿泊スペースになりました。


メンテナンス費用が掛かる立体駐車場の台数を減らすために、マンション内でカーシェアリングを
始めました。現在、 22名のメンバーが参加しています。

◆みんなでマンションの経営を

さあ、みなさんのマンションでも使われていない共用施設がないかチェックしてみましょう。一部
の人だけしか使わない施設は人々の不満が多くなり、維持管理負担感が高くなります。きちんと利用の回数・頻度を把握しましょう。 どうすればもっと使ってもらえるのか、料金や利用のルール等、利用の仕方をはじめに考えてみましょう。そのうえで、別の利用方法を考えることが必要です。せっかく豊かなマンションライフが可能なのだから、みんなで粗大ゴミを持ち、無駄なお金を使うのではなく、マンションを賢く経営していきましょう。まさに、マンション管理はマネジメントの時代です。


なお、規約の変更や共用部分の変更は区分所有者と議決権の4分の3以上の賛成が必要となります
ので、皆様にアンケートを実施する等、くれぐれも十分に理解を得てから変更するようにしましょう。

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。