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  • 2010年夏号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆バルコニーに物置を置いたらなぜいけないの?

マンションを買った。憧れていた広々としたバルコニーに温室をつくろう、物置を置こう、人工芝生を張ろう、庭園にしよう、アンテナを設置しよう。
こんな期待を胸にマンションに入居した人がいます。こうしたバルコニーの使い方が問題になっているマンションが全国で15.2% あります*1
どうもマンションのバルコニーの本来の意味が理解されていないようですね。なぜ、こうした使い方が問題なのでしょうか。

*1平成初年度マンション総合調査結果より

◆マンションのバルコニーの役割

マンション居住者にとって、バルコニーは住戸内と外を結ぶ大事な空間です。朝起きて、バルコニーに出て、新鮮な空気を吸って「今日も一日がんばろう」。あるいは「今日は寒いな」など、家に居ながらにして外を楽しめる唯一の場所ともいえるでしょう。居聞からそのまま出られるバルコニーはわが家の一部のようです。だから、家の中のように自由に使えると思っていることが間違いなのです。

マンションのバルコニーは多くの事例で共用部分になっています。それを各住戸の人が専用使用しています。そこで使い方にはルールがあります。
なぜ共用部分になっているのでしょうか?どうして使い方にルールがあるのでしょうか。

①建物の大事な躯体です。だから、勝手な使い方をして建物を傷めると困ります。共用部分として適正に維持保全する必要があり、それを阻害するものは取り除く必要があります。
②それぞれの住戸が勝手な使い方をすると、建物全体の美観を損ねます。
③重い物を置き、荷重がかかりすぎると、落下の危険等があります。
④使い方によっては下階に水が浸透する等、近隣居住者に迷惑をかける可能性があります。
⑤避難経路を失い、命が危険になる可能性があります。

だから、バルコニーは共用部分とし、勝手な使い方を認めず、管理組合が規約や使用細則で使い方を決めているのです。

◆なぜ命が危険?

多くのマンションではバルコニーは避難経路になります。例えば、住戸内で火事が発生しました。私はリビングにいます。この場合に、外に逃げるのに、火元のキッチンを通過し、玄関から廊下に逃げることは危険です。そこで、マンションではもう1つの避難経路を確保することになっています。これが、バルコニー側に出て、隣のバルコニーを伝って逃げる方法です。また、廊下で火事になっている場合も廊下に逃げるわけにはいきませんから、別の方法で避難することが必要です。これがバルコニーを使う方法です。

ですから、バルコニーに物置などがあれば、避難の際には、自分や隣の住戸の方の命にかかわることになります。マンションでお互いが安心して居住するには、万が一に備え、避難経路をきちんと確保した利用の仕方がとても大切になります。だから、物置が置いてある、植木鉢がいっぱいで通れないなどが問題なのです。