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  • 2013.04.01掲載

管理組合の役員ってなに? どう選ぶの?

明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆役員選出の工夫

役員が毎年輪番で交代しても運営できる工夫として、「役員マニュアルをつくる」「役員経験者による顧問制度をつくる」等があります。また、理事とは別に、階ごとに班長やフロアー長等を選出し、これには賃借人にもなってもらい、できるだけ理事の仕事を減らす工夫もみられます。
不在の区分所有者だけでなく、高齢者や出張が多い等の職業上、理事が困難な人もいます。こうした場合には、専門家の活用もあります。
住んでいる人同士がお互いに思いやり、そのマンションに合った方法で役員を選ぶことが重要になっています。

●理事の資格は?
居住している組合員以外にも認めている例として、居住していない組合員にも14.5%、居住組合員の同居家族にも18.8%、賃借人にも2.4%、専門家にも0.3%、管理会社社員にも0.3%がある。
●理事の任期は?
1年が65.9%、2年が30.4%、3年が0.6%で、半数ごとの改選は23.4%である。(以上、平成20年度マンション総合調査結果より)
●理事会方式と管理者方式
日本では理事会が重要な執行機関となっていることから、フランスやドイツの管理者方式に対して、理事会方式と呼んでいる。

標準管理規約における理事選出の考え方(コメントより)
① 理事の員数は、おおむね10~15戸につき1名選出する。員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とする。
②200戸を超え、役員数が20名を超える大規模マンションでは、理事会の中に部会を設け、複層的な組織構成、役員の体制を検討する。 この場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長、副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である。
③法人が区分所有者である場合、法人関係者から役員になることを認めるか、法人関係者が役員になる場合に管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者に限定する等をあらかじめ規約や細則に定めておくことが望ましい。

◆気をつけること!

理事は、管理組合の間では民法上の委任関係として考えられます。そこで、管理組合からの信頼関係に基づき、選任された本人が業務を遂行することが求められています。にもかかわらず、理事本人が常に理事会に出席しないで、代理の人が常に参加し、活動をしているのでは問題です。こうした場合には、しっかりと役員資格を見直しましょう。もちろん、緊急やむを得ない場合の理事の代理は可能です*1
「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」と規定する規約の条項は、法49条7項の規定により管理組合の理事について準用される民法55条に違反するものではないので、こうした条項がある管理規約を有効とした(最高裁判所平成2年11月26日判決)*1

*1 「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」と規定する規約の条項は、法49条7項の規定により管理組合の理事について準用される民法55条に違反するものではないので、こうした条項がある管理規約を有効とした(最高裁判所平成2年11月26日判決)

また、不在の区分所有者は役員をせず、日常的な維持管理の活動が居住している区分所有者に偏っていること等から、不在の区分所有者から「住民活動協力金」の徴収を行っている例があります*2
不在区分所有者から管理組合が協力金を集めることは「必要性と合理性が認められないものではない」とした(最高裁判所平成22年1月26日判決)*2
しかし、こうした対応は常に認められるとは限らず、不在区分所有者の占める割合、徴収する金額、使途などを十分に考慮し、公平な組合運営に務めることが必要です。

*2 不在区分所有者から管理組合が協力金を集めることは「必要性と合理性が認められないものではない」とした(最高裁判所平成22年1月26日判決)

◆理事会運営のみえる化

さらに気をつけることとして、残念なことに、理事長等による管理組合のお金の横領事件等もみられます。理事相互のチェック体制を強化し、理事長等のワンマン・不正行為を防ぐ体制づくりと、全区分所有者に理事会運営がみえる配慮をしましょう。せっかくがんばって理事の皆さんが活動しているのに、「勝手に決めた」などといわれないように、理事会便りの発行など、活動内容がしっかりとみえるようにしていきましょう。

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。