トップページ > 連載 > マンガで事例研究 > マンション管理適正化法ってなに? 改正でどう変わるの?
  • 連載
  • マンガで事例研究
  • 2020.10.01掲載

マンション管理適正化法ってなに? 改正でどう変わるの?

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

●築年数が経ったマンションの管理上の課題

 マンション管理適正化法制定から20年が経過し、マンションを巡る状況が大きく変わってきました。建物と居住者の「二つの老い」の進行により、管理不全マンションが一定程度顕在化してきたことです(2020年冬号を参照)。管理不全マンションは都市部にも既に存在し、このまま何も手を打たないと、今後ますます数が増え、また深刻な事態になっていくことが予想されます。そこで、さらに一歩、行政の関与が求められるようになってきました。マンションが朽ちると、そこに住んでいる人が困るだけでなく、周りや地域に迷惑をかけることが想定されるからです。管理不全になることを予防し、かつ、そうしたマンションを解消することが必要です。
 今までのマンション管理施策は、「がんばるマンション」を応援するものが多くありました。主体的に管理に取り組んでいる管理組合の相談や支援、例えば、相談窓口の設置、セミナーの開催、アドバイザー派遣、補助金の交付などです。しかし、「がんばれないマンション」は相談にも行けないし、だんだん朽ちていくのに、行政や周りは静観するだけで、より深刻な管理不全に陥ってしまうことになっていたのです。
 また一方では、適正に管理をしてもなかなか市場価値に反映されにくいという現状があります。きちんと適正に管理しているマンションと、そうでないマンションを見分けることができないだろうか。このような視点から、管理組合が自主的に、適正な管理に向けて取り組みを起こすように誘導する必要性も認識されるようになってきています。こうしたことを背景に、マンション管理適正化法が改正されました(2020〈令和2〉年6月16日成立、6月24日公布)。
 改正の内容は次のとおりです。

国土交通大臣は、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(基本事項、目標の設定、基本マンション管理適正化指針等)を策定する。
地方公共団体(市・区、市・区以外は都道府県)は、国が定めた基本方針に基づき、管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項等を定めるマンション管理適正化推進計画(目標、管理状況の把握方法、施策、都道府県等マンション管理適正化指針、計画期間等)を策定する(任意)。
マンション管理適正化推進計画を作成した地方公共団体は、適切な管理計画を持つマンション(例えば、修繕の実施、資金計画、管理組合の運営状況など)の管理計画を認定する。また、認定を受けたマンションに報告を求める。
「管理組合がない」「管理者がいない」「規約がない」「総会を開いていない」ようなマンションに対して、必要に応じて、地方公共団体は指導・助言等を行う。
これにより、地方公共団体はこれらの実施に向けた体制を整えることになります。そして、
管理組合、区分所有者は管理の主体であることに変わりはなく、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう自ら努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるマンションの管理の適正化の推進に関する施策に協力するよう努めなければならないとされました。

●マンションの管理に関心を持ち、適切な運営を

 マンション管理適正化法の改正により、行政がより一歩踏み込み、関与の根拠が明確になりました。いままでの条文では、「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない」(改正前 第5条)とあり、管理組合に求められていないのに、行政が関与できるのか、あるいは問題があるマンションに対しての指導や勧告はどうすればよいのかが課題となっていましたが、今回の改正で、行政は必要であれば、助言・指導等ができることになります。
 ただ、法律が改正されても、管理組合の主体的な取り組みが重要であることに変わりはありません。今後、国がマンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針を策定し、地方公共団体はマンション管理適正化推進計画を策定することになります。その動向や内容に関心を持ち、自分たちのマンションの管理計画を持ち、その管理計画が公的に認定されるようなマンションにしていきましょう。
 マンション管理に関心を持ち、参加することは、区分所有者としての役割であり、基本的なマナーでもあります。




「解決!ひろこ先生 マンション暮らしBOOK」発売中!

齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞、都市景観大賞優秀賞、グッドデザイン賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。