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  • 2020.04.01掲載

第三者管理者方式ってなに?

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

どうすればいいんだろう。理事のなり手がないし、理事長のなり手もない。一体、私は何年、理事長を続ければいいのだろうか。賃貸の住戸が増え、もともと住んでいた区分所有者は高齢者ばかり。管理の課題は増えるし、管理費などの滞納も増えている。80歳を超えた私には、理事長の任はもう厳しすぎる。それに、法律でいう管理者とかいうものにもなっている。管理費滞納の裁判など、荷が重すぎる。これ以上、理事長や管理者をやれといわれても無理だ。正直、限界だ!
じゃあ、私は出ていくしかないのか……。どうすればいいんだ!!


●理事長が必ず管理者になる?

 そんなに悩まないでください。マンションの理事の選出が大変な場合もありますね。2018年度に実施された国土交通省のマンション総合調査でも、役員または専門委員の人材不足に悩んでいるケースが11.2%となっています(表-1)。マンションの築年数別に見てみますと、築年数が経っているマンションでは、問題も増えており、管理費などの滞納も多くなっています。マンションも区分所有者も若かったころと異なり、問題が深刻になっています。
 管理者とは、マンションの中の管理の最高責任者です。区分所有者の代理人でもあります(管理者については2017年夏号「管理者って何?」をご覧ください)。でも、必ずしも区分所有者から理事を選び、理事長を選任し、その人が管理者にならなければならないわけではありません。法律では、管理組合が法人ではない場合、必ず理事を選び、理事は区分所有者でなくてはならないと決めているわけではありません。管理者についても、区分所有者や理事長でなくてはならないわけでもありません。そこで、国が作成したマンション標準管理規約ではどのように規定しているかを見てみましょう。

表-1.供給年別トラブルの発生状況(複数回答、単位:%)

*築年数は調査時点からすると正確には49、44、39・・になるが、わかりやすく50,45,40・・と表記した。
 以下、同様である。
*網掛けは平均値よりも高い比率を示している。

●理事、管理者についての標準管理規約での規定

 一般的には、理事は区分所有者から選ぶことが多いのですが、外部専門家を活用する場合には、国が作成したマンション標準管理規約に以下の規定があります。

第35条(※外部専門家を役員として選任できることとする場合)
(中略)
2 理事及び監事は、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

そしてその前段に、以下の条文があります。

第34条
管理組合は、マンション管理士(適正化法第2条第五号の「マンション管理士」をいう。)その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。

 さて、こうした規定の背景には、マンションの高経年化の進行等による管理の困難化もありますが、タワーマンション等のマンションの大規模化による管理の高度化・複雑化が進んでいることがあります。そこで、上手に専門家を活用しましょうということです。

●外部専門家の活用の仕方

 標準管理規約にあるように「理事長は、区分所有法に定める管理者とする」(第38条第2項)ことが多いのですが、理事や理事長のなり手がない場合、または再開発マンションで住居部会と店舗部会があり、建物や設備・権利関係等が複雑な場合、あるいはリゾートマンションで区分所有者の多くが遠方に住んでいる場合などに、管理組合の運営に外部の専門家を活用するケースがあります。その形態として、理事会をつくらず専門家が管理者になる場合(①外部管理者総会監督型)、理事会はあるが、管理者や理事の1人、監事に外部専門家がなる場合(②理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型、③外部管理者理事会監督型)が想定されます。

 実際に、管理者を外部の専門家にしているマンションのお話をききました。理事会をつくる場合とつくらない場合、理事会があっても理事長を選ぶ場合と選ばない場合、理事会はないけれど顧問会、委員会等をつくる場合、内部監査や外部監査を置く場合など多様なケースがみられました。そして、管理者も、マンション管理士である場合、管理会社である場合、NPO組織である場合と様々です。総合すると、理事会がないケースが多くなっていました。