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  • 2017.10.02掲載

築年数が経ったマンションに若い子育て世代を

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

 次は、京都市にある築約40年、約200戸のマンションです。効率的な管理組合運営や質の高いマンションを目指し、マスタープランを作成しています。エコ・省エネ対策として、共用部分の電気代を削減、高圧一括受電、共用灯のLED化、住戸ガラスの断熱化、外断熱、太陽光発電設備の導入を行い、さらに将来の建替えに備えて隣地の購入も行われています。若い世代が中古住宅として購入し、入居することを期待して、コミュニティホールでの子供絵本文庫の整備にあわせ、幼児同乗シート付自転車優先区画の整備を行っています。日曜日にはコミュニティホールの1階が喫茶室になります。建物と人への高齢化対策が行われていました。

 最後は、千葉市の築約50年の約800戸のマンションです。ここでは、耐震改修工事をはじめ、玄関ドアの交換、窓ガラスやサッシュの交換、そして外構・庭の大規模な改修が行われました。従来からあった木を半分ほど伐採し、公園の砂場や遊具、ベンチを新しく入れ替え、子供たちが安心して遊べる環境づくりに取り組みました。また滑り台は、文化祭の時にデザインを投票してもらい、選ばれた作品をもとに子供たちの手でペンキが塗られたそうです。明るく若々しくなっています。

 さらには、築80年に向けてのマスタープランづくりです。管理会社も、住戸を10 戸ほど買い取り、DIY型賃貸住宅の供給を始めます。若い世代が賃貸で居住してみて、気に入ったら購入するといった道ができました。また、若い世代でイケメンクラブをつくり、理事のメンバーが大きく若返っています。ここにも生まれ育った2代目が帰ってきています。
 その一方で、高齢者への配慮もあります。管理組合で合い鍵の保管や、工事などで各住戸に立ち入る際のお助け隊の結成などです。「若い子育て世代の方が住みたいと思えるマンションは資産価値の向上にもつながる」というのは理事長さんの言葉です。

●マンションの3つの老いを予防

 3つのマンションはともに将来を見据えた計画を持っています。過去ではなく、未来に向かって、建物の老い、人の老い、そして組織の老いの予防をしています。つまり、若い世代の入居が進むのは、それだけの管理が実践されているからです。3つのマンションともに、区分所有者自らが体を動かし、汗をかき、自分たちのマンションを良くしたいという熱意を感じました。「築年数なんて怖くない! 怖いのは、自分のマンションに関心を持たない区分所有者や居住者が多いこと」ということです。
 借りて住む若い世代は管理組合の構成員ではありません。そのため、こうした賃借人との交流や意見反映の場、マンションのルールの伝達なども行っているそうです。マンションの改善には、誰かのためのバリアフリーという視点から、誰もが使いやすいユニバーサルデザインへ、という考え方が必要です。
 築年数が経っても若い人の入居が多いマンションでは、自分のマンションに愛着を持ち、関心を持ってもらえる努力をしています。こうした取り組みの一つとして、夏祭りなどのイベントをしているマンションが多いのではないでしょうか。イベントは、マンションやそこに住む人を知る最初の一歩になるはずです。マンションを、世代を超えて交流できる素敵な場にしたいですね。



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齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション2025ビジョン懇話会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。