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  • 2013.07.01掲載

地域とのコミュニティ

明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆地域と一緒に夏祭り?

「日頃お世話になっている ○○町会の皆さまへ
次の日曜日はマンション前広場で子供向けスーパーボールすくい、大人向けには演奏会をしますので、ぜひともお越しください
○○マンション」

こんな手紙がはいっていた。
だってさ。マンションの人と日頃会わないし、行ってみるかな。
・・♪♪
わいわいがやがや・・マンションの前に浴衣を着た子供がいっぱいいるぞ。こんなに子供が多いのか。あれ?!近所の八百屋の親父が子供といっしょにスーパーボールすくいをしている。たのしそうだな。マンションができて良かったな!

◆地域から期待されるマンション

マンションが震災後ますます地域から熱い期待を寄せられています。確かに、東日本大震災でマンションが地域に寄与した例が多くきかれました。

・津波が来て、マンションの非常階段に上り、助かりました。一夜、マンションの共用廊下で過ごしました。翌日には、管理員さんが避難所まで行って、救命ボートを依頼してくれました。

・マンションの敷地内で、地元町内会で炊き出しをしました。体があったまり、ほっとしました。

・断水が2週間も続き、その間、マンションの受水槽から水をもらいました。マンションには毎日役所の人が給水にきていました。近くにマンションがあってよかったです。

・マンションの集会所で救援物資をわけました。公民館は遠いので、本当に助かりました。

こうした事例は首都圏でもみられました。耐震性が優れたマンションは近隣からの避難の場となり、首都圏の超高層マンションの5%で地域からの避難がありました。

◆相互連携の必要性

こうして防災や減災のために、マンションと地域が連携することを、マンション管理組合の約9割、町会の約7割が、必要だと考えています*1

マンションからみても地域からみても「一時避難場所としてマンションの共用スペースや屋上の開放」「地域での救援活動、救出活動、避難場所運営活動へのマンション住民の参加」といった、マンションの共用スペースや、マンション居住者という人材への期待が大きくなっています。実際に、地域とマンションが協定を結ぶ例も増えてきています。

*1 国土交通省が2012年~2013年に調査を実施。
国土交通省国土交通政策研究所「集約的都市居住における地域防災力の強化に関する研究~マンション管理組合・町会へのアンケート調査結果~」より。

◆いざという時のためのコミュニティ活動

災害時には何とか協力できるだろう・・とぼんやり、考えていれば、うまくいかないのではないでしょうか。

まずはマンションのなかから考えていきましょう。いざという時に居住者相互が助け合えるには、日常的にどこにどんな人が住んでいるか、顔が見えていることが重要です。
マンションで居住者が参加する、共同清掃、防災訓練、夏祭りなどのイベントを実施しているマンションほど、いざという時に管理組合が即座に避難の誘導、安否の確認、備蓄物を分け合う等の対応をしていました。

また、居住者同士も相互に助け合いました。イベントに参加している人ほど、いざという時に、助ける人になっています。どこにどんな人が住んでいるのか、お互いが知っているということは安心して暮らせることに大きく寄与しています。
居住者のイベント参加数別に見た「東日本大震災時にマンション内の居住者を助けた人」の割合