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  • 2013.04.01掲載

見直そう!学ぼう! マンションにかける保険

株式会社マネーライフナビ 高田晶子
火災保険・地震保険は建物や家財の火災や自然災害による損害などを総合的に補償してくれる、いわば住まいの保険です。マンションの場合、専有部分と共用部分があるため、保険の掛け方も複雑になります。管理組合任せで、ともすれば無関心になりがちな共用部分の保険ですが、共用部分も区分所有者の財産ですから区分所有者全員の理解が必要です。専有部分と共用部分とのかかわり合いを中心にマンションにかける火災保険・地震保険の解説をします。

◆マンションでのリスクにはどんなものがある?

保険は、何かが起きた場合の経済的な損害を補填してくれるものです。保険そのものの話の前に、マンションでの生活の中にある、経済的な損失をともなう様々なリスクを考えてみましょう。例えば次のようなものが挙げられます。
・火事や爆発による損害
・地震や台風などによる自然災害
・盗難
・漏水
・他人にケガをさせてしまった
・雷で家電が壊れた
一戸建てに住んでいる場合でも、火災や自然災害など同じようなリスクがありますが、マンションには特有のリスクもあります。例えば、漏水の場合部屋の中に損害が出るだけでなく、階下に被害が出てしまう可能性もあります。マンションの外壁がはがれ落ちて通行人にケガを負わせてしまったなども考えられます。隣接して住む人がいる集合住宅だから起きる被害や、自分が注意していれば良いだけではないようなことが、マンションならではのリスクと考えられます。
マンションでのリスクから発生する経済的損失は、損害保険でカバーできるものもあります。保険を考えるうえでは、まずリスクについて洗い出し、所有者・居住者各々がリスクに対する備えの重要性を認識することが大切です。

◆マンションの火災保険は専有部分と共用部分に分けて契約

マンションでのリスクを考えるうえで複雑になる要因の一つが、専有部分と共用部分に分かれていることでしょう。専有部分での事故等の責任は所有者となり、共用部分でのものはマンションの管理組合となります。管理組合はそもそも区分所有者が組合員となっているので、つまりは所有者全員に関わることです。
損害をカバーしてくれる火災保険については、専有部分は区分所有者が、共用部分は管理組合が契約します。専有部分に火災保険を付保するかどうかは区分所有者である個人の自由です。しかし、共用部分についての火災保険の加入は、実はマンションの管理規約によって「管理組合の業務」として定められていることがほとんどですので、原則加入しなくてはなりません。火災保険の新規締結や補償内容を変更しての締結は、総会での決議が必要となります。出席組合員の議決権の過半数の賛成が必要となる普通決議です。

◆共用部分と専有部分の境界は管理規約で確認を

共用部分とはどこの部分を指すのかを明確にしておきましょう。通常、エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール等「専有部分に属さない建物部分」、エレベーター設備、給水設備、排水設備等の「専有部分に属さない建物の附属物」、管理事務室、集会室等で管理規約で「共用部分の範囲」としている部分です。なお、各々の個室となる専有部分と共用部分の境目についても、火災保険では重要になります。国土交通省が作成した『マンション標準管理規約(単棟型)』によると、専有部分の範囲について「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。」と定めています。つまり、専有部分と共用部分の境目は、壁、天井、床の内側とするということで、これはいわゆる「上塗基準」と呼ばれるものです。現在は多くのマンションがこの標準管理規約を使っているので、ほとんどのマンションで該当するでしょう。「上塗基準」の他に「壁芯基準」を採用しているものもあります。管理規約で共用部分と専有部分を確認しておきましょう。

上塗基準・壁芯基準 【専有部分の範囲】国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)』より抜粋
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専用部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。