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  • 2012年秋号

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マンションの防災組織と、行政との連携が成功している事例として、東京都荒川区の主な取り組みと、自治会内で区の推進する「区民レスキュー隊」を組織している大規模マンションの活動内容をご紹介します。

◆都内屈指の危険エリアから「防災の町」へ

都内屈指の木造住宅密集地である荒川区。地震による建物の倒壊や火災の危険度が23区内でも高いため、区が特に力を入れているのが、区民による防災組織づくりです。地道な活動によって、近年では「防災の町・荒川」として、23区でも上位の防災力を誇る区となりました。

主な組織としては、防災区民組織、区民消火隊、区民レスキュー隊があります。

防災区民組織は、町会、自治会を単位に結成された区民の自主防災組織で、現在区内にある町会、自治会全120団体において、100パーセント組織化されています。

区民消火隊は、地震による火災の発生時に、火災を制圧することを任務とする組織で、現在10隊が結成されているほか、小型消火ポンプ174台を小中学校や町会に配備しています。

区民レスキュー隊は、阪神・淡路大震災において、近隣住民が器具等の使用方法を理解していなかったために倒壊した家屋から被災者を救助できなかった、という教訓を受けて結成されたもので、区民による救出・救護体制の整備を目指しています。現在、57組織93隊があります。

荒川区では、これらの団体に対し、防災備蓄品の買い替えの際に補助金を助成したり、さまざまな防災用品を配布したりして、支援を行っています。

荒川区区民生活部防災課長の大関英広氏は言います。「昨年の震災時には動けないお年寄りを近隣住民がおんぶして搬送するなど、区民の防災意識は高い。震災以降、防災訓練の 参加者が1・5 倍に増えました」。

異常気象による水害への警戒、首都直下型地震も待ったなしと言われる中、今後の課題点も見えてきました。それは防災区民組織同士の連携です。

これまでは、毎年大きな会場で展示型の総合震災訓練を行ってきましたが、昨年からは1つの避難所に集まる町会単位で、避難所の開設や運営訓練などを行い、少しずつ役員同士の顔が見えるような取り組みに変えていく予定だということです。

◆コミュニティが防災力強化のカギ

荒川区にある、地上11階建て、全7棟・総戸数423戸の大規模マンション。こちらでは、管理組合とは別に自治会を持ち、区の指導によって自治会内に防災隊を組織しています。自治会長兼防災本部長である三浦勇伯氏に、お話を伺いました。

防災隊は、自治会役員が兼務する防災本部、全戸を26班に分け、班長を毎年交代で任命する防災班と、常任の30~50歳代の男性30 名からなる区民レスキュー隊で構成されています。

具体的な活動内容は、避難訓練時の誘導、班員の人員および高齢者や幼児など災害弱者の把握などがあります。

平時の活動の中で特に大切なのが、年2回行われる防災訓練です。防災隊のみが出席し、器具の操作技術を訓練する1回目に対して、2回目は居住者全員を対象としています。消火器使用訓練、煙体験訓練、炊き出し訓練などを行う本格的な内容です。中にははしご車や起震車体験など、消防や区と連携した内容を組み込むことも。模擬火災通報訓練では、誰が一番大声を出せるかを競い、上位者に景品を用意するなど、イベント的な要素も盛り込みました。これは、居住者の参加率を挙げるための工夫で、これによって昨年は120人以上の参加があったそうです。

また、防災班長を1年交替としたことについて、真の目的は別にある、と三浦氏は言います。「班長になって隣近所の住人を知ることで、皆が顔見知りになれる。実はつくりたいのは、コミュニティなんです。それがあれば、防災面だけでなく、日々のちょっとしたトラブルも気にならなくなりますよ」。

昨年の東日本大震災は、平日の14時46分に発生しました。こちらのマンションでは受水槽の連結部分が破損したほか、エレベーターが停止(どちらも夕方には復旧)。マンションのレスキュー隊員は当日ほとんどが仕事に出ており、実際には60歳を超える役員と、主に女性で構成される班長やその他在宅の人たちで助け合い、住民の安否確認、車椅子の居住者を集会室へ搬送するなどの作業を行ったそうです。これも普段のコミュニティづくりの成果でしょう。防災力強化はコミュニティの力がカギになりそうです。

しかし、当日はあわてて組織立った行動が取れたとはいえないこと、レスキュー隊が不在だったことなど、反省点も見つかりました。災害はいつ起こるかわからないもの。レスキュー隊の人員構成の見直しが今後の課題だと、三浦氏はおっしゃっていました。