トップページ > 連載 > 地域コミュニティシリーズ > 東日本大震災発生後、マン ション防災委員3名を中心に、 冷静な災害対応
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  • 2012年夏号

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マンション管理組合を運営する中で必ずといっていいほど浮上してくる問題のひとつに「管理組合と自治会の関係」があります。
いざ、有事が起こったときは、管理組合も自治会も相互に協力しなければなりません。
そこで、マンション管理組合と自治会がうまく連携し運営され、災害対応が行われた事例を紹介します。

◆管理組合が協力し合う組織浜管ネット

本年3月11日、『マンションの豊かなコミュニティづくり』と題した管理組合交流会(南部地区)が開催され、横浜市南部地区にある9つの管理組合関係者などが集いました。主催者は、NPO横浜マンション管理組合ネットワーク(以下:浜管ネット)。浜管ネットは、管理組合相互の情報交換や管理向上のために、1995年6月管理組合による自主的なネットワークとして設立され、1999年10月に特定非営利活動法人として神奈川県より認証を受けました。横浜市内のマンション管理組合が会員で、管理組合員同士の交流会やセミナーが開かれ、情報交換やマンション管理の相談など活発に運営されています。

◆2010年より防災活動に力を入れ、東日本大震災はスムーズに対応

今回の交流会では、「防災活動を通したコミュニティづくり」として、戸塚区のマンション管理組合の活動事例が発表されました。横浜市の南西部に位置する10階建て2棟の全戸206戸の大型マンション。2011年3月11日、震度5の地震が発生しました。発生時にマンション内にいたマンション防災委員は、3名でした。

揺れがおさまったあと、敷地内にある管理棟の前に居住者たちが集まりました。エレベーターは緊急停止、辺り一帯は停電となりました。

地震発生直後、3名の防災委員の中からすぐに災害対策本部長を決めて、災害対策本部を管理棟内に設置。居住者たちには、まず、管理棟内にある安否確認ボードに各戸の安全確認がとれた人数を書き込んでもらいました。建物は免震構造で大きな被害はなかったと確認した後、自宅へ戻る居住者にはランタンを貸し出したり、ライトを所持した理事が付き添ったりして対応。そのほかの居住者たちには、管理棟で避難するように指示し毛布を配布して、一夜を過ごしました。停電のため居住棟は断水しましたが、幸い管理棟の水道が直接上水道とつながっていたため、居住者はトイレを使用することができました。

停電の対策として、備蓄品である発電機を稼働させて居住者たちが携帯電話の充電を行い、家族と連絡を取り合っていました。また、投光機をマンション共用棟に設置するとともに、TVを設置し情報収集することにより、居住者に安心感を与えました。

帰宅した居住者は、まず、管理棟の安否確認ボードを見て、家族の安全を確認することができたといいます。
エレベーターが復旧したのは、翌日午前1時頃でした。

◆まず、自治会を設立し下部組織に防災委員会を設置

管理組合は、竣工後管理会社のサポートを受けながら運営されていました。その後自治会設立のために会費を集めたり、補助金を申請したりして自治会を設立しました。2006年には、マンション内防災組織の立ち上げが検討されて、基本方針を作成。2008年に、自治会総会において自治会下部組織として、防災委員会が正式に設置されました。

防災委員会立ち上げ当初は、災害時に行うことの検討、要援護者の定義を決定、居住者の安否確認方法などを決めて、防災訓練を行い、徐々に気づいた点を改善していきました。そして、2011年にマンション独自の災害マニュアルを作成しました。

災害マニュアルは非常に簡素なもので、基本的なルールと実施事項のみ記してあり、誰が読んでも理解できる内容になっています。また、物資の保管場所や、災害時用の機材操作の手順などの説明も、誰でも対応できるわかりやすい内容になっています。この災害マニュアルは、管理棟のすぐ目につく場所にあり、居住者の誰もがいつでも閲覧できるようになっています。この防災委員会の最大の特長は、いざというときには、委員の誰もが指揮を取れるようにと、代表と副代表以外の役職は作らないフラットな組織体系です。

今回の東日本大震災の対応は、この防災委員会のシステムとこれまでの防災活動をとおした知識により、スムーズに行われたのです。

この事例は、自治会の役員が管理組合の理事になったり、防災委員と管理組合理事を兼務していたりと、役割と決まりをきちんと守ったうえで自治会と管理組合の役員が一つになり、二つの組織の相互関係が保たれています(自治会・管理組合は別会計で処理しています)。地域コミュニティによる防災活動がまとまって運営されている成功例だといえます。