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  • 2010年秋号

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マンションと住民の関係だけでなく、市民と地域に目を向け、行政を巻き込んだコミュニティ形成を目指す人物がいる。「地域の資産価値H市民が住み続けてくれる街」を掲げ、10先を見据えた街づくりを考える吉澤康博さんが、その人だ。

埼玉県川口市。かつて鋳物の街として名を馳せ、工場の煙に包まれていたこの街も現在は10万人以上がマンションに住む。マンションのまち、と言われるまでに姿かたちを変えた。

その街の成長過程で、希薄になりつつある住民同士の繋がりに危機を感じ、「川口マンションコミュニティ連絡協議会」の旗揚げの中心人物となったのが、吉沢康博さんだ。川口マンションコミュニティ連絡協会とは、市とマンション管理組合員、そしてNPOが手を結んで、マンション住民との繋がりを図る団体で、これは埼玉県初の試みとなる。協議会は、平成初年8月に発足したが、その経緯について吉沢さんは「マンションの住民の方々に川口を好きになってもらいたいから」と語る。

マンションが増え続けることに関して、吉沢さんは地域コミュニティに関して不安を抱えていたことも事実だ。「もともとマンションを購入する方々は、人間関係に関してあまり興味を持たない人たちが多いと思うんですね(笑)。世帯主のお父さんたちは川口市ではなく、会社がある東京に目を向けている。となると、地域でコミュニティを形成するのはお母さんになってくるわけです。子供が小学校、中学校の頃は、お母さん同士の繋がりもありますけど、子供が成長してしまうと地域への意識が希薄になってしまう。そこが問題なんです」。

何も吉澤さんが重要視しているのは、30代、40代が中心の核家族だけではない。高齢者の安全性にも目を向けている。

「市が、図書館などの施設を作ることによってコミュニティの場ができる。例えば共働きの家庭で、高齢者の方がひとりで家にいるケースも多いと思うんです。 そういった方に公共の施設をつかってもらうことによって、コミュニティはもとよりれっきとした防災にもなるわけです」。

そう、吉澤さんの目はマンション内でのコミュニティではなく、地域、それも広範囲にわたる地域に住んでいる人々に向けられているのだ。それゆえ、川口マンシヨンコミュニティ連絡協議会を発足させた理由も自ずとうなずける。協議会の活動内容には、管理組合員のための基礎講座や情報交換会、そして住民たちも参加可能なコミュニティフェスタという祭りも開催している。ことしも11月7日に川口駅前の広場で開催する予定だ。

マンションの建設ラッシュもひと段落した現在、吉澤さんは笑いながら“これから”についてこう語った。

「これからが大変になりますよ。今の子供たちがどれだけ川口を好きになってくれるか。川口を住みやすい街にするためにも住民に川口を好きになってもらわなければならない。本当の意味で資産価値をあげるためにもこれから先、私たちがやらなければならないことはたくさんあるんです」。