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  • 2013.07.01掲載

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マンションと地域社内の人々と 地域コミュニティシリーズ

一昨年の震災以降、人と人とのつながりが見直されています。マンション居住者にとっても、管理組合を主体としたマンション内のコミュニティのみならず、地域との連携は重要な課題です。
そこでこのシリーズでは、マンションの管理組合や自治会と周辺の地域住民が、協力して活動している様子をレポート。
今回は、マンションの共用施設を交流の場として地域に開放するなど、柏の葉キャンパスの先進的なコミュニティへの取り組みについてお伝えします。

◆公・民・学の連携によるまちづくり

駅前にある大きなマンションの多目的室に、次々と人が集まっていきます。いつもは集会室として使われる部屋は、机やいすが隅に寄せられ、リズム体操教室に早変わりです。元気の良い挨拶とともに、早速奥様達の情報交換が始まります。「そろそろ始めましょうか」。講師の野村志津江氏の声で皆が一列に並ぶと、テンポのいい音楽に合わせてリズム体操が始まりました。

ここは千葉県柏市、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅前にあるマンションです。このようにマンション内の多目的室を利用して、定期的に教室などの活動が開催されています。今日の参加者は10数人。聞けばマンション居住者ではない人も半分ほどいて、隣の駅から電車に乗って参加している人もいるそうです。「マンションの共用施設はマンション居住者しか使えないのではないですか?」と聞くと、「ここはそういう街じゃないから」と皆さん笑って言います。

つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅を中心とした柏の葉地区は、2000年より面積273ha、計画人口26,000人の土地区画整理事業が行われています。2005年につくばエクスプレスが開業。新駅の周辺には大規模商業施設や病院、タワーマンションなどが次々とつくられ、2008年に千葉県・柏市・東京大学・千葉大学の4者により「柏の葉国際キャンパスタウン構想」が策定されました。

その理念は「公民学の連携による国際学術研究都市・次世代環境都市」であり、環境・健康・創造・交流の4つをテーマとしています。これらのテーマに沿ってさまざまなプロジェクトやイベント、クラブ活動が盛んに行われており、主宰する団体も参加者も多彩な顔ぶれです。活動の場はまちづくりの拠点である四角い箱型の建物「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」のほか、マンションの共用施設や広場でも多くのイベントや教室が催されているため、皆さんそれが当たり前のようになっているのです。

◆誰でも利用できるマンションの共用施設が交流の場

「マンションの共用施設を街全体で活用していくためには、“最初が肝心”だと思います。そういうオープンな雰囲気を持つ地域であることを知っている人も多いため、街の人たちがマンション内を出入りすることに寛容なんですよ」と教えてくれたのは、リズム体操教室をはじめとする「マチノ先生プロジェクト」を主宰している、まちのクラブ活動事務局の齋藤香代子氏。地域のコミュニティを支援するNPO支援センターちばから運営に参加しています。

「マチノ先生プロジェクト」とは、街の住人が趣味や特技を生かして“先生”となり、講座を開催するプロジェクトです。教室を通じて先生と参加者が仲良く交流することを目的としているため、報酬はありません。講師の野村氏も言います。「私は普段リズム体操の講師として働いているのですが、3年前にこの街に越してきてお友達をつくりたかったので “マチノ先生”に申し込んだんです」。参加者も健康づくりと友達づくりのために参加されている方ばかり。この教室は街ができた当初からある人気教室で、友達が友達を誘って今では仲間の輪が広がり、そこから派生してコーラスクラブもできたそうです。

みなさんとてもいい笑顔をしているのは、何といってもリズム体操が楽しいから。そして大勢で他愛もないおしゃべりができることも楽しみの一つです。多くの人にコミュニティに参加してもらうには、まず“楽しい”という思いが大事だと分かります。また、先生側も自分のこれまでの経験や知識を生かして街に貢献できる、自分も街づくりに参加している、といった意識が持てることで、やりがいを感じられるのではないでしょうか。

◆バラエティ豊富なプロジェクトで街全体のコミュニティを形成

そのほかの活動としては、多くのクラブ活動や子育て応援プロジェクト、コミュニティ放送局、市民による駅前緑化プロジェクト、月1回開催のマルシェ、大学のキャンパスを舞台とした市民参加型の講座など、まさに公・民・学が協同して時には主宰者側となり時には参加者となって、さまざまな形で交流しています。それぞれの特性や特徴を“街の資産”として生かし、街全体を巻き込んだダイナミックなコミュニティを生み出そうという新しい試みです。

前述のマンションでも、共用施設を地域に開くことでマンション住人が地域の輪に気軽に参加することができ、地域の人たちと一緒に街を育てていく。ぜひ参考にしたい取り組みです。
「キーワードは多世代交流なんです。子供とは本来、色々な世代の人が関わって育てていくもの。街全体で子供を育て、その子が大きくなってまた街を育てていってくれればいいと思っています」と齋藤氏。たくさんの人に育ててもらった子供たちは、やがて街に戻ってきて子育てをし、街づくりに参加する。サスティナブル(持続可能)な街の未来像がそこにありました。

◆柏の葉キャンパスシティで行われるプログラム(一部)

「学ぶ」
ピノキオプロジェクト…参加型子育てアートイベント
千葉大学カレッジリンク・プログラム…地域のだれもが大学で共に学びあう機会を創出

「まちのクラブ活動」
クラブ…子育て、ピクニック、自転車、コーラスなど現在26種類
プロジェクト…マチノ先生プロジェクト、ベビママ応援プロジェクトなど現在6種類

「イベント」
マルシェコロール…毎月第1土曜日開催。100を超える出店がある時も
はっぱっぱ体操…音楽に合わせて体と脳を鍛えるオリジナル体操
その他、春のピクニックイベント、夏祭り、ハロウィン等季節のイベント多数